2008年5月3日 ~散歩の下見? 山形・高畠日帰り旅行~

昨年もそうだったが、5月は我が早朝散歩にとって鬼門の月である。
3日、4日と連休を予定していたものの仕事が押して3日だけの休みとなってしまうし、11日は子供の通う学校で清掃の奉仕活動、17日は同じく学校で運動会があり、翌18日も家族で外出予定となっている。
そんな訳で丸一月散歩に出られないのだが、その代わり、今日は家族で小旅行。行き先は、山形県高畠町羽州街道や二井宿街道を経由するので、風景を楽しむという点ではある意味散歩の代わりになる。え、運転は? それは妻に任せます。3月に買ったばかりの我が家のクルマは殆ど妻が運転しているし、途中でワイナリーにも寄る予定だから、酒飲みの私は運転するわけにはいかないのだ。
午前7時に起床し、朝食を摂り、身支度をして、9時20分に自宅を出発。羽州街道を走りつづら折りの小坂峠を越え、宮城県白石市へ。上戸沢、下戸沢の宿場町を通過して国道113号線へと入る。藤坂のバス停を指差し「去年の8月に家からここまで歩いたんだよ」と自慢げに話す私。妻は驚いてくれたものの子供たちは無反応。
白石市から七ヶ宿町に入るとすぐに飛び込んでくるのが、雄大七ヶ宿ダム。それまで沿道の風景には無関心だった子供たちの目も、自然と車窓に引き寄せられる。3月に福島市の茂庭ダムを訪れていたせいもあり、ダムにはそれなりに関心があるようだ。
ダム湖が尽きると、七ヶ宿町の中心・関の集落。人口2,000人を割り込んだ七ヶ宿町だが、関の規模は意外に大きい。新しい家屋が目立ち外観上はかつての羽州街道の宿場町らしさは失せてはいるものの、街道(国道113号線)沿いの家屋には屋号が掲げられており、できるかぎり雰囲気を残そうとの努力の跡は見て取れる。
関から5キロほど西へ進むと、次の宿場町・滑津。ここはかつて本陣だった安藤家の住宅など歴史的建造物が見られる集落だが、ペンションはあるし「旬の市 七ヶ宿」という観光物産施設ができているしで若干興醒め。むしろ次の峠田宿の方が、小ざっぱりしていて昔日の面影を残しているような気がした。
宮城県最後の宿場町となる湯原を過ぎると、羽州街道(主要地方道上山七ヶ宿線)が右へと分岐し、国道113号線は宮城・山形(高畠町)の県境となる二井宿峠へと差し掛かる。かつての二井宿峠は大型車の通行がままならない隘路であったが、1997年に峠の北側をぐるりと迂回する二井宿道路が開通したため、かなり走りやすい道路になった。クルマは分水嶺を越えてすいすい峠道を降りていくが、湯原から高畠へと至る街道の宿場町だった二井宿の集落が見れないのは少し残念。
ダムに関心を示した子供たちだが、県境を越える頃にははすっかり熟睡モード。道の駅たかはたの近くに掲げられた大量のこいのぼりにはまったく気づかない。この付近は他にも安久津八幡神社の三重塔や米鶴酒造、蛭沢湖など観光スポットが点在する。高畠の観光スポットといえば町役場のある中心街からJR高畠駅付近の間に点在しているイメージが強いのだが、必ずしもそうではないのだ。
ところで、この辺りの国道113号線は、かつてJR高畠駅(旧糠ノ目駅)と二井宿とを結んでいた山形交通高畠線の路盤跡が使われている。かつての街道は国道のやや南側を通っているようだ。散歩に出かける際はどちらを歩こうか、ちょっと迷う。
高畠の中心街に入る。福島でもおなじみのロードサイドショップがあるなど変哲のない地方都市の雰囲気だが、文化ホールの前を通った時、ちょっと驚いた。今日、成人式があるという。帰宅後に調べてみると、山形県では1月に成人式を行う自治体は少数派で、大半が8月の旧盆に実施し、高畠町の属する置賜地方はゴールデンウイーク中に実施するケースが多いという。県外に出た新成人が帰省しやすいように、また晴れ着が積雪でオシャカにならないように配慮したためらしい。自宅を出てからまだ1時間しか経っていない地域でこれほどまでに風習が異なるのか、と驚く。
中心街を抜けると、前方に月山、飯豊、吾妻の山々が見えてくる。いずれも頂に雪を載せており、美しい山容だ。一方、近くの里山はというと、斜面にビニールハウスをかぶったブドウ畑が展開。高畠町やその北の南陽市山形県内でも有数のブドウの産地であり、高畠にワイナリーが設けられた由縁ともなっている。「泣いた赤鬼」で知られる童話作家浜田広介の記念館にも心惹かれるものがあったのだが、今回はパス。まずはJR高畠駅の近くにある高畠ワイナリーへとクルマを走らせる。到着直前には、子供たちも目を覚ましていた。
高畠ワイナリー。駐車場は満車に近く、結構な混雑ぶり。意外にも家族連れが多い。露天で販売されているソフトクリームを頬張る人、工場前の広場で開催されているライブ(サンポーニャという南米の楽器だった)を聴く人。思い思いに楽しんでいる。
我々は、まず工場見学。醸造の工程はさすがに見れなかったが、出来上がったワインを瓶詰めし、コルクで封をし、ラベルを貼る過程は見ることができた。食品工場だから当然のことだが、作業場内が清潔であったのが印象的。高畠ワインに対する好感度は確実にアップした。
工場を見学した人たちは、自動的に試飲コーナー、そして売店へと通される。小さいカップを手にいろいろと試飲する私。一人で朝からアルコールを頂戴している脇で「おとうさん、なんばいのんでるの?」と呆れたような上の子の声。ちなみに試飲はワインに留まらず、妻や子供たちもブドウジュースを戴いていた。
売店でお土産用のワインを買い、外に出て露天でソフトクリームを食べてから、ワイナリーを出発。先ほど走った道を二井宿まで戻り、二井宿からは県道楢下高畠線に入る。小規模な峠を越えると上山市。しばらく走ると県道は羽州街道に合流し、歴史的建造物がいくつか残る楢下宿を通過。宿場町から1キロほど先の丹野こんにゃく(こんにゃく番所)へと立ち寄る。
ここのキャッチフレーズは「たかが蒟蒻、されど蒟蒻」と江川卓か!とツッコミたくなるようなものですが、製品は間違いなく一級品。名物の玉こんをはじめ、刺身コンニャク、キムチ味コンニャク、黒豆コンニャクと出るわ出るわ。コンニャクオンリーでよくぞこれだけのレパートリーができたものだと感心する次第。子供たちも気に入ったらしくいろいろ試食していた。ここでは自家用にお土産のコンニャクを購入。
丹野こんにゃくからは羽州街道を上山方面へ。楢下から上山までは宿場町はなかったはずだからひなびた風景が展開するのかと思いきや、沿道には意外に住宅が多く張り付いており、面食らう。羽州街道国道13号線とは立体交差。どうやって国道に入ればいいのか戸惑う妻。私も山形県の道路事情にはさほど詳しくないので、ナビの役目を果たすまでには至らない。
それでもなんとか国道に入り、ひたすら南下。南陽市を通り抜けて再び高畠町へ。国道沿いにあるよねおりかんこうセンターに立ち寄り、ここで昼食。名称はひらがなであったが、漢字で書くと米織=米沢織のことだろうか。そのせいかどうかはわからないが、置賜地方で唯一天領だった高畠町内では目立たなかった直江兼続~米沢上杉藩の基礎を築いた重臣で、来年の大河ドラマの主人公~のポスターが、至る所に貼られていた。今日訪れた、あるいは通過した観光スポットは、来年は今以上に盛り上がることになるのだろうか。今度は歩いてこの地を訪れてみたいと、改めて思った。