2007年3月4日 ~兜から藤田まで~

先週は自宅の北にある東白石駅を利用したので今日は南の安達駅から散歩に出掛ける予定を立てていたのだが、散歩後に家族で福島の温水プールに行くことになったので、もう少し近場を歩くことにした。
地図とニラメッコした結果、選んだのは、阿武隈急行福島県内最北端の駅・兜(伊達市梁川町)から東北本線の藤田駅(国見町)まで歩くというルート。goo地図で調べたところ距離11.6キロとやや短めだが、これだけ歩けるコースがまだ自宅近辺に残っていたのかと思うとちょっと嬉しくなる。
まだ夜が明けきらない5時半に自宅を出発し、桑折発5時42分の始発電車に乗車。5時49分着の東福島で下車して阿武隈急行卸町駅まで歩き、卸町発6時13分の電車で兜へと向かう。本来阿武隈急行の列車の始発駅は福島であり、今回乗った東北本線の電車は5時56分福島着、阿武隈急行の電車は6時06分発だから福島で乗り換えても十分間に合うのだが、そうしなかったのは電車賃の節約のため。私の選んだルートだと桑折~兜間は730円(JR190円、阿武隈急行540円)かかるのだが、福島で乗り換えた場合860円(JR230円、阿武隈急行630円)にまで跳ね上がってしまうのだ。
話を阿武隈急行に戻すと、卸町~兜間は19.6キロしかないのだが、途中に駅が12個も挟まっているので、所要時間は33分もかかる。急行とは名ばかりの「阿武隈鈍行」状態。窓越しに見える伊達市内ののんびりとした田園風景を眺めていると、何しに出かけているのかわからなくなりかけてしまう。
6時46分、ようやく兜に到着。「民話の里」のキャッチフレーズがついているが、確かに周囲を見渡すと、盆地が尽きて阿武隈高地の只中を阿武隈川が刻んでおり、民話の三つや四つは転がっていてもおかしくなさそうな雰囲気だ。人家も少ない所だから乗降客も少なく、私が降りると言うと電車の乗務員は少し驚いた表情で「帰りの切符はどうなさいますか?」などと訊いてくる。優等列車ならともかくローカル線の小駅で帰りの切符の心配をされたのは初めての経験だ。
さて、いよいよ散歩スタート。駅近くにある兜橋で阿武隈川の対岸に渡り、まずは国道349号線を西へと向かう。この349号線は、福島県宮城県とを結ぶ主要道路のひとつではあるが、特に県境付近の幅員が異常に狭く、その役割を果し得ていないのが実状だ。特に福島県中通りから宮城県南部にかけては東北本線東北自動車道、国道4号線が絡み合うように走っているため、県境付近で大規模な自然災害が発生した場合、両地区間の貨物輸送は完全に麻痺してしまう可能性がある。その回避手段のひとつとして、国道349号線は早急に整備されるべきだと思う。
そんな柄にもないことを考えながら歩いていると、何時の間にか山そして阿武隈川は国道から離れていき、また国道も幅員が広がり2車線となる。人家も若干増えてくる。ここは伊達市梁川町五十沢(いさざわ)。それほど大きくはない集落だが小学校や郵便局があり、体裁は整っている。
しかし、ここでちょっと困ったことが。五十沢には犬を飼っている家が非常に多く、その前を歩く度にワンワン吠えられるのだ。番犬の役目は十分に果しているし飼い主にとっては立派な忠犬なのかもしれないが、何回も連続して吠えられる側はたまったものではない。冗談抜きで、オバQ並みの犬嫌いは、五十沢を歩かない方がいいと思う。
五十沢の集落の西のはずれで国道は南に向きを変え、阿武隈川を渡って梁川の町へと向かう。しかし私は、橋を渡る手前で県道五十沢国見線へと入り、藤田へと歩を進める。
県道に入って初めて入る集落が、東大枝。驚いたことに、県道に沿って家々が街村状に集まっている。昨年8月19日の記念すべき第1回の散歩で訪れた貝田宿に掲げられた案内板に書かれていたのだが、この県道はかつて奥州街道の貝田宿と梁川の城下町とを結んでいた街道で、東大枝はその宿場町だったとか。ちなみに、貝田と東大枝とを結ぶ道(県道大枝貝田線)は、集落のすぐ西で分岐している。
分岐点のすぐ先には、大枝小学校がある。伊達市国見町との組合によって運営されており、福島県では唯一の組合立小学校である。そもそもこの小学校の学区は伊達郡大枝村だったのだが、戦後の町村合併で東部が旧梁川町、西部が国見町に分割されてしまったため、この措置が採られた次第。国見町伊達市に参画すればスンナリ伊達市立の小学校になっていたのだが当分自立の道を歩むことになったため、今後も組合立小学校として存続することになりそうだ。いや、大枝地区自体の小学生が減少傾向にあるので、小学校の統廃合に伴う組合立の解消も、そう遠くない将来に起こるかもしれない。
小学校の少し先が、伊達市国見町との境界。国見町側に桜華楼という中華料理店がある。ラーメンがとびきり美味いお店だ。
国見町側は五十沢や東大枝のようなまとまった集落がみられず、田畑の中に人家がチョボチョボという風景になる。当然歩道もなく、狭い路肩を歩かざるを得なくなる。時折通過するクルマが、私を大きく避けていく。
周囲には森林も丘陵もなく眺望がきいているので、前方には観月台文化センターや公立藤田総合病院など国見町を代表する建物がいくつか見えてくる。兜を出てまだ1時間半。ちょっとあっけない気がする。そしてこれらの建物の更に向こうに見えるのが、半田山。半田山というと桑折町のシンボルのように言われるが、桑折から見る半田山は稜線が周囲の山にかき消されてしまっており、特段目立つ山ではない。むしろ国見や梁川から見た方が、存在感が際立っているような気がする。
国道4号線、そして藤田の町を通り抜け、8時37分、藤田駅着。歩行時間は、1時間50分であった。