2007年3月24日 ~梁川から越河まで~

前々回は雨による予定変更、前回は家族のインフルエンザによる中止と、このところ消化不良気味の早朝散歩。次回以降の予定も立て直しになる。
でも、実は、この時が楽しみだったりもする。地図を片手にどのルートを歩こうかなとあれこれ推察するのは、変な話、ストレス解消になっている。
で、もう一度、今後のルートを考えてみた。

(1)「日和田駅」~国道4号線郡山バイパス~安積永盛駅
(2)「本宮駅」~二本松市(旧岩代町)小浜
(3)「杉田駅」~二本松市岳温泉~二本松駅
(4)「安達駅」~二本松市針道
(5)やながわ希望の森公園駅~丸森町耕野~「越河駅」
(6)「船岡駅」~南角田駅
(7)「岩沼駅」~阿武隈川河口付近~亘理駅
(8)「館腰駅」~県道仙台館腰線~「長町駅」
(9)「南仙台駅」~名取市閖上(ゆりあげ)~仙台空港(駅)
(10)東北福祉大前駅仙台市中心部~「太子堂駅
※「 」で囲った駅は、早朝散歩での未乗降駅

で、どのルートから手をつけよう。一応、自宅から近い順かな。となると、初っ端は(5)で次が(6)。あとは(4)、(7)、(3)、(8)、(2)、(9)、(1)、(10)の順で、歩いてみることにしよう。大体5月中旬までのスケジュールになるかな? また、仙台空港アクセス鉄道も、(9)の帰途に乗ってみようかと思っている。

という訳で、今回の散歩はやながわ希望の森公園駅から越河駅までのルート。国道349号線伊達市梁川町から県境の向こうの丸森町へ、県道越河角田線で丸森町から白石市へと行くが、特に後者はクルマで通ったこともない、私にとって未知のルート。しかも峠越えなので下手すると残雪とかないかも心配だ。
しかも、散歩の前夜に就寝したのが、午前2時半のこと。つまり、散歩に行こうにも2時間ちょっとしか就寝時間が取れないという体力的には無茶極まりない状況だったのだが、どういう訳か、目覚ましをセットした午前5時ジャストに起床。普段は寝過ごしたり二度寝したりしょっちゅうやらかしてるのに、散歩になると予定通りに目覚めてしまうのはどうしてでだろう。甘いものは別腹なんて表現があるけれど、この表現を借りれば、私の場合、散歩に絡む睡眠は別物ということになるだろうか。
ジャージに着替え、髭を剃り、妻が用意してくれた甜茶入りのペットボトルを携えて、5時半に自宅を出発。18日のダイヤ改正で1分早まって桑折発5時41分となった福島方面への始発電車に乗車する。
3月4日と同様に、東福島で下車し徒歩で阿武隈急行卸町駅まで。更に卸町発6時12分発の電車に乗って昨年10月29日以来の来訪となるやながわ希望の森公園前に6時39分着。
まずは、梁川の町はずれを歩く。住宅と田畑の入り交じった風景だが、左手には新興住宅地も展開している。この新興住宅地には希望ヶ丘という名前がついている。福島県には郡山市にもう1ヶ所、希望ヶ丘という名前の新興住宅地があるけれど、この名前、全国にいくつぐらいあるのだろうか。ちょっと気になる。
希望ヶ丘から先の周辺の風景は、田畑が中心の農村っぽいものとなる。前方には屏風のように阿武隈高地の山々が迫っており、まもなく福島盆地が終わることを伝えている。
その福島盆地の端っこにあるのが、富野の集落。小学校や阿武隈急行の駅もある、比較的大きい集落だ。富野の地名のいわれは、ちょっと変わっている。そもそも富野は1889年の市制・町村制の施行に伴う舟生(ふにゅう)村と八幡(やわた)村との合併でできた村名を起源とする比較的新しいものなのだが、舟生の「ふ」と八幡の「や」、それぞれの頭の文字をとってそれに「富」「野」の字を充てたという話。この種の命名は、例えば福島市近辺ならば野田町(笹木野・上野寺・下野寺+八島田)や金谷川(金沢+関谷+浅川)など頭の漢字をとって合成するのが普通なのですが、ここはどういうわけかかなが介在するという不思議な事例となっている。
富野の集落を過ぎると、道が二手に分かれる。右(東)に行くと山舟生(やまふにゅう)の集落を経て丸森町の中心部に抜ける県道丸森梁川線、左(西)に行くと阿武隈急行、そして阿武隈川に沿って進む県道川前梁川線。道幅を確認すると前者のほうが歩きやすそうだが、今回の目的はここから西北に位置する越河駅なので、後者を選ばざるを得ない。
軽く起伏のある県道をしばらく歩いていくと、ついに盆地が尽き、山がすぐ近くまで迫ってくる。そして左手には、阿武隈川。川の対岸には、3月4日に歩いたばかりの五十沢(いさざわ)の集落や国道349号線も見える。2度目の渡河となる兜橋を渡って阿武隈川の対岸に出、国道349号線を少し歩くと県境。標識には、県境の町・丸森のシンボルである齋理屋敷のイラストが描かれている。
兜付近でもかなり山深い印象のある阿武隈川沿岸だが、宮城県に入ると、その度合いが一層強くなる。その原因はおそらく、田畑が殆ど見られないことだろう。福島県側だと山の斜面に半ば無理やりに畑や果樹園をこしらえるケースが多いのだが、宮城県側ではそれが殆どないのだ。代わりに目立つのが竹林で、国道沿いにびっしりと生えている。山の斜面はもちろんのこと国道と阿武隈川との間の狭いスペースにも竹が叢生しているので、この付近の国道349号線は地図上では阿武隈川に寄り添うように走っているけれど、川自体はあまり良く見えなかったりする。
そういえば、今歩いている丸森町耕野(こうや)地区は、筍の産地だ。となると、このあたりの竹林から採れる筍も、食用として出荷しているのだろうか。国道沿道をさらっと見る限りでは下草が整備されているとは言えない状況だし、きっと道路から離れたところに「竹畑」があるのだろうと思う。
阿武隈川と竹林が続く風景を3キロほど歩くと、ようやく集落が登場。集落内のT字路を左に折れ、阿武隈川と別れいよいよ山へと分け入ることになる。歩く道路は、地図で確認する限りは県道川前白石線。だがセンターラインすらない国道349号線を凌駕するほどの狭い道で、普通車のすれ違いはもちろんのこと、大型車の通行すらも厳しそうな感じである。
でも、人家が殆ど見られなかった国道沿いに比べて、この県道沿いにはある程度のまとまった集落がいくつか見られる。個人商店や理髪店、簡易郵便局もあった。このあたりが、耕野の中心集落のようだ。富野を出てから長らくこんな風景には遭遇していなかったので、安堵の表情となる私。
だが、そんな風景も、長くは続かない。恐らく耕野で一番大きい集落と思われる大和沢中地区を通り抜けて県道越河角田線に入ると、険しい山道に差し掛かる。勾配は急になり、人家も殆ど見られず、右手には崖。しかもところどころ工事が行われている様子で、物理的に歩くことができるのかどうか疑わしくなる状況にすらなる。ここまでくると、もう散歩ではなく、トレッキング状態。携行してきた甜茶の量もだいぶ減っているし、心細さが増してくる。
それでも、行ける所まで行ってしまおうという思考が頭の片隅に残っていたりするのが、散歩マニアの長所でもあり哀しさ。不安な心理とは裏腹に、足は山を登り続けていく。そんな風景が30分近くは続いたろうか。突然、前方が開け、奇妙な建物が姿を現してくる。
養鶏場。
大抵人里離れた所に建てられる施設なので、間近で見たのは初めてのことだった。でも、実際近くを歩いてみて、隔離されてしまうのも仕方ないかな、と痛感。まず鼻についたのが、鶏たちのフンの臭い、次いで耳に入ってくるのが、何千羽とも何万羽ともつかない大音量の鳴き声。鳥インフルエンザの存在があろうがなかろうが、日常生活とはかけ離れた異様な雰囲気であった。
ちなみに、この養鶏場を分水嶺として、県道は下り勾配に入る。自治体も、丸森町から白石市へと変わる。相変わらず狭い山道を歩いていると、前方に見覚えのある山が登場。更に歩くと、谷底の先に東北自動車道東北本線が見え、やがて集落が登場し道幅も広くなります。ようやく下界に降り立った… 見知った風景を見るとやはり嬉しくなる。 
東北自動車道のガードをくぐると、あとは田んぼの中。結局、越河駅には9時19分に着いた。やながわ希望の森公園前を出発してから2時間40分が経過していた。