2007年8月26日 ~塩竈から松島まで~

今日は8月5日の続きで、東北本線沿線を塩竈市から松島町まで歩く予定だ。
ただし、当初予定していた終点は、品井沼駅よりも手前にしたい。やはり帰宅時刻が午後にかかるのはよろしくないように思うのだ。せめて12時台に帰宅できるようにスケジュールを組みたい。
となると帰りは、仙台駅発11時03分の快速仙台シティラビット2号を利用せざるを得ない。これだと自宅最寄りの桑折駅には12時01分に着くから、一応の条件は満たしている。
では、この快速に乗るためには、松島町内を何時に発てばいいのだろう? 時刻表で確認すると、以下の3パターンが候補となる。

(1)東北本線愛宕駅発10時14分発普通列車(白石駅行)
(2)東北本線松島駅発10時16分発普通列車(白石駅行)
(3)仙石線高城町(たかぎまち)駅発10時28分快速列車(あおば通駅行)

(1)と(2)は同一の列車。(3)は8月5日の帰途に本塩釜から乗った快速列車と同一の列車である。
なお、今回の散歩の出発点である本塩釜駅には、8時14分に着く予定である。本塩釜駅に近い塩竈市本町(もとまち)から松島駅までの距離は、国道45号線経由で約10キロ。ただし今日はトンネルの多い国道ではなく松島湾の海岸線に沿ってヘアピンカーブが続く旧道を歩く予定でいるので、それより1、2キロの上乗せは覚悟せねばなるまい。となると、愛宕駅まで行くのはちょっとキツそうだ。本命は松島駅高城町駅か。
とにかくまあ、行ってみるしかない。いつものように桑折駅発6時29分の下り列車に乗って7時39分仙台駅着。地下にある仙石線のホームへ移動し、仙台駅発7時46分の普通列車に乗りかえ定刻8時14分に本塩釜駅に到着。定期券の乗り越し精算などで時間をとられ、駅を出たのは8時16分のことであった。
本塩釜駅から国道45号線に出、しばらく歩く。海に丘陵が迫り平地の少ない塩竈の街だが、さすがは国道で4車線の広い道だ。沿道には港町・塩竈らしく、釣具屋やサーフショップなど海に関連の深い店舗が目立つ。
しかし、それにも増して思うのが、塩竈の街の規模の大きさ。塩竈市の人口は約5万8千。宮城県内13市の中で9番目と下から数えたほうが早いのだが、それは塩竈市市町村合併の道を選択しなかった結果であり、「中心街」に限ると話は違ってくる。面積17平方キロメートル、離島部を除く大半の地域がDID(人口集中)地区となっている塩竈市の市街地は約17万人と宮城県内第2位の人口を誇る石巻市のそれと比べても遜色ない規模であり、人口13万人で第3位の大崎市の中心・古川よりは明らかに格上。大規模な市町村合併がなされた昨今、自治体の人口イコール都市の規模ではないことを、塩竈の街は如実に物語っている。
仙石線普通列車の約半数が終着となる東塩釜駅の前を過ぎると、国道45号線の旧道が登場する。国道沿いはロードサイドショップや工場、倉庫が建ち並んでいるが、旧道沿いは住宅地。松島に近いせいか、頂上に松の木をいただいた丘陵なども現れる。
しばらく歩いているうちに住宅はなくなり、松林の中に入る。旧道が国道45号線と再び合流すると、行政区画が塩竈市から利府町へと変わる。利府町といえば塩竈市の西側、現在は仙台のベッドタウンとして発展しているイメージが強いのだが、塩竈市の北側にもちょっとだけかかっており、「表松島 梨の郷 利府町」などと書かれた看板が国道沿いに立っていたりする。
また、利府町に入ると、右手には松島湾、左手には仙石線東北本線が姿を現す。線路の向こうは丘陵なので、ここはまさに、各種インフラがひしめく交通の要所だ。三陸自動車道の開通以降は交通量が減ったとはいえ国道にはクルマがひっきりなしに走っているし、線路を見ると、お客さんを満載した仙石線石巻駅行の列車が通過していく。今日は東松島市矢本にある航空自衛隊松島基地ブルーインパルスが飛び交う航空祭が行なわれるので、列車も大忙しだ。
で、徒歩の私はというと、利府町に入ってしばらく国道を歩くものの、途中で分岐する旧道に分け入り、のんびり散歩を楽しんでいたりする。行き交うクルマも人もなく、松林の間から響いてくる蝉時雨だけが聞こえてくる。時折松林の間から松島湾が見える。海中では牡蠣の養殖が行われておりまた遠方には塩竈の街並みや七ヶ浜町にある仙台火力発電所の煙突が見えていて観光的にはイマイチの風景なのかもしれないが、腐ってもやはり日本三景で、なかなか見応えがある。また、沿道の干潟では、潮干狩りにいそしむ人々が何名か見られた。松島海岸の近くに潮干狩りのスポットがあるなんて聞いたことがなかったので、見た時にはちょっと面食らった。
こんな感じで、途中仙石線陸前浜田駅付近及び利府町と松島町の境界付近で国道に合流するものの、旧道は松島海岸の近くまで続いている。国道45号線をクルマで走っていただけではわからない、松島の表情だ。なお、この辺りの国道45号線は歩道が整備されていない箇所が多く、正直言って、散歩には適していない。風景を楽しむためにもまた安全のためにも、この辺りの散歩は旧道を歩くに限るのだ。
国道に戻る。松島海岸の近くだとさすがに歩道がついているが、これがちょっと変わっている。恐らく松と思われるのだが、木片のチップで舗装されているのだ。観光的にも環境保護的にも良かれと思ってこの舗装がなされたのだろうが、歩行者にとってはあまりよろしくなかったりする。一歩一歩足を踏み出す度に、路面が凹むのだ。まるでちょっと固めのゴムマットの上を歩いているような感覚で、長時間歩くと負担がかかりそうだ。
トンネルをくぐると右に松島水族館、左に仙石線の松島海岸駅が現れる。ここから先は、松島海岸の観光スポットだ。沿道には土産物屋や宿泊施設が建ち並んでおり、道行く人も多い、観光地で見かける人の大半は年配のツアー客というのが定番だが、南東北では今日が夏休みの最終日ということもあってか、家族連れの姿も目立つ。
しかしその時の私は、観光気分という訳にはいかなかった。松島海岸駅前を通過した時点で午前10時。そろそろ帰りの電車の時刻を気にしなければならなくなっていたのだ。時間的に既に愛宕駅は厳しくなっている。となると松島駅高城町駅まで何とかたどり着かねばならない。果して間に合うのだろうか。
観光スポットを通り過ぎ、住宅地の中へと入る。右手には高城川(たかぎがわ)が寄り添う。川岸には小舟が何隻も係留されており、松島と海との関わりは何も観光だけに限らないことを改めて認識する。しばらく歩くと、松島駅前の交差点。時刻は10時14分。駅まで走れば列車には間に合うかもしれない。が、万が一間に合わなかった時のことを考えると若干リスキーに感じられたので、結局高城町駅まで歩くことにした。高城町駅は交差点を駅とは逆の方向に曲り、高城川を渡った先にある。
駅付近は、町役場もある松島町の行政上の中心地である。石巻街道の宿場町でもあるが、町並みを見た限りでは、以前歩いた亘理町荒浜や名取市閖上と同様、漁師町の雰囲気を感じた。先ほど高城川で見た小舟が印象に残っていたせいだろうか。
メインストリートから小路を分け入った所にある高城町駅に着いたのは、10時22分のことだった。小屋のような小さな駅舎には、快速列車に乗るとおぼしきお客さんが20人ほど待っていた。