2007年10月7日 ~鹿島台から小牛田まで~

先週はかなりハードに働いたため、ちょっと疲れている。しかも久しぶりに1日だけ取れた休み。普通だったら家でゴロ寝のパターンである。
でも、散歩には出掛けたいので、早起きして桑折駅発6時29分の下り始発電車に乗り込む。今日は鹿島台駅から小牛田駅までを歩く予定だ。小牛田は東北本線のみならず陸羽東線石巻線気仙沼線の列車の始発駅でもあり、宮城県北部の鉄道の要衝。だからなおのこと出掛けたい。
7時44分に仙台駅を出発。ここから先は通勤ルート外だから、車窓を見る目にも気合が入る。これまでも車窓には目を凝らしていたつもりだったのだが、仙台以北の東北本線沿線には駅前に集合住宅や新興住宅地が結構展開しているのを、今更ながら知る。岩切駅前は大規模な区画整理がなされているし、松島の先にある愛宕という駅舎すらない無人駅にも、近くに大きいマンションが建っていたりする。その先の品井沼も、更にその先、今回の起点となる鹿島台も、駅周辺に新興住宅地が展開。人口減少社会に突入している現在。宮城県だってその例外ではないはずなのに、住宅の供給量は増す一方のようにすら感じる。そう言えば、今回訪れる松山町や小牛田でも、駅周辺に新興住宅地が展開しているという。
定刻8時20分に、鹿島台駅着。乗り越し精算を済ませ、8時21分、散歩のスタート。まずは大崎市鹿島台の目抜き通り・国道346号線を北上する。しばらく歩き、水害予防用の閘門を移設したという鹿島台小学校の立派な校門の前を通り過ぎると交差点。国道はここで右折し、涌谷町や登米市佐沼へと向かう。が、私は直進。歩く道路は主要地方道鹿島台高清水線だ。高清水といえば大崎市を通り越して栗原市の南端。遠くまで来たなという感を強くする。
しかしこの主要地方道東北本線に沿って大崎市松山、美里町小牛田と仙台とを結んでいる幹線道路の割には細かい起伏が展開する丘陵の中を進んでいるせいか若干歩きにくい。特に鹿島台の町外れにある鹿島台商業高校の入口から北は、歩道が完全に消滅。路肩も雑草で覆われており、車道を恐る恐る歩く羽目になる。交通量はさほど多くないが時折トラックも通過するから、胆を冷やす。
丘陵が尽きると田園風景が展開。どうやら鹿島台を抜けて松山へと入ったようだ。松山町駅周辺に展開している新興住宅地が、前方はるか遠くに見えている。
しかし、私はそちらへは立ち寄らない。今回の散歩では松山町駅から西に2キロほど離れた松山の市街地を経由して、小牛田へ抜けようかと考えている。松山は伊達氏の重臣・茂庭氏の城下町。城跡の御本丸公園は今コスモスの花が見頃だというし、町並みの様子も気になる。
そんな訳で期待に胸を膨らませるものの、現実に歩いているのは田園風景の只中。そして人家と商店がチョボチョボといった状況。商店は十中八九酒屋である。早朝散歩をしていて感じるのだが、地方の個人商店は酒屋、床屋、魚屋、そして飲み屋が圧倒的に多い。しかし、松山の商店は他地域とはちょっと違う。酒屋にしろ飲み屋にしろ、この地で醸造を行っている一ノ蔵を扱う店ばかりなのだ。二本松の大七にせよ塩竈浦霞にせよおらが町の蔵元には小売店は最大限の敬意を表する傾向が確かにあるが、一ノ蔵は1973年に宮城県内の四つの蔵元が合併してできた比較的新しい蔵元。なのに老舗と肩を並べるぐらいの支持を得ているのが、なんとなく嬉しい。
主要地方道から松山の町に出るには、左折して丘陵を越えなければならない。「コスモス園」の案内表示が並ぶ坂道を歩いていると、ちょうど分水嶺のあたりに、妙な石碑を発見する。見ると「野蒜街道開通の碑」とある。野蒜は鳴瀬川の河口に位置する東松島市の地名だが1882年から84年にかけてのごく短期間明治政府の肝入りで貿易港として発展をみた歴史を有する。その開港に際して、野蒜からこの松山を経由して古川、岩出山、鳴子、そして秋田県へと結ぶ道路も計画されたようだ。
坂を下り、いよいよ松山の町へ。規模自体はそれほど大きくはないが一ノ蔵をはじめ松山の地場産品を展示している酒ミュージアムを中心に擬歴史的建築にリニューアルしたとおぼしき家屋、商店が数軒あったりして、城下町らしい町並みの醸成に努めている雰囲気だ。また、地元商工会で申し合わせたのか、いくつかの商店では玄関に暖簾が設けられている。私の住む桑折町でも暖簾を掲げる商店が多いが、このような地域は全国を探せば結構あるのだろうか。いずれにせよ、松山は現在「小京都化」が徐々に進んでおり、そう遠くないうちに歴史で観光客を呼べる町へと変貌することが期待できそうだ。村田町や登米市登米町とセットで「宮城の三小京都」として売り出すのもいいかもしれない。
町を抜けると再び主要地方道に戻る。風景もまた田園地帯となる。前方に長々と堤防が横たわっている。鳴瀬川の堤防だ。鳴瀬川宮城県内だけを流域とする河川の中では最大規模。川幅も深さもそれなりにある川だ。
鳴瀬川を渡ると、大崎市松山から美里町小牛田へと入る。これまで同様田園風景が展開するのだろうと思っていたのだが、ちょっと様子が違っている。人家が結構多いのだ。しかも、古ぼけた農家や商家ではなく、比較的新しい「住宅」が。まるで仙台近郊に舞い戻ってしまったかのような光景だ。鹿島台、松山と見てきた目には、町の成り立ちの違いに若干面食らう。
小牛田駅が近づくにつれて、その傾向は一層強まってくる。歩道のカラー舗装が施された幅員の広い道路なんてこの辺の小都市ではなかなか見かけないものだが、小牛田の場合街中のメーンストリートからしてそうなのだ。特に駅前から西に延びている満天星通りなんて、仙台市泉区あたりのニュータウンを彷彿とさせるくらいだ。
小牛田駅には10時10分に到着。歩行時間は1時間49分で、いつもより若干短めであった。