2009年11月30日 ~信夫山来訪 その2~

今日の散歩の行き先は、信夫山である。
今年3月10日にも訪れているが、その際行き漏らしていたスポットがいくつかあったので、まとめて訪れようと思ったのである。前夜から雨が降っていて心配したものの、当日になると薄日も射してきた。ここ数回の散歩で御用達になりつつある桑折駅発8時13分の上り電車でまずは福島駅へと向かう。
福島駅からは、中央通り、北裡(きたうら)商店街と一直線に東進する。平和通りを別格とすれば、福島駅前と国道4号線とを直線的に結んでいるのは、実はこのルートだけである。福島市中心市街地はは南北方向の道路が比較的しっかりしており真北に位置する信夫山第一展望台から俯瞰すると碁盤の目のような街並みに見えるのだが、東西方向の道路が意外に脆弱なので、厳密にはアミダくじ状の街並みと言えるのだ。
そんな貴重な中央通り及び北裡商店街であるが、街並みの方はというと、どちらも以前に比べると寂れつつあるように感じた。福島市を代表する歓楽街だった中央通りは駅前通りが商店街から歓楽街に変化しつつあるあおりを受けてか旧来の飲食店が撤退しているように見えたし、北裡商店街に至っては、以前あったはずの結婚式場の場所に斎場が営業しているのがある意味象徴的で、そのうち商店街とは呼べなくなるのではないかと思われた。
仲間町(ちゅうげんちょう)の交差点で左折し、国道4号線に入る。すぐに馬頭観世音の文字が目に入るので、立ち寄ってみる。案内文によると、この観音様は今1600年(慶長5年)に当地を治めていた上杉家の福島城代・本庄繁永により建立されたとあり、信達(準)坂東三十三観音の三番札所でもあるという。ただ、ちょっと気になったのは、「昭和五十一年八月 曹洞宗 馬頭山 観音寺」という記述があったこと。恐らくこれは別当の寺院の名前であろうが、困ったことに福島市に該当する寺院が存在しないのである。ちなみに、福島市には岩谷観音で知られる観音寺、上鳥渡の観音寺、飯野町飯野の観音寺の3ヶ所も観音寺があるのだが、岩谷の観音寺は真言宗、後二者は天台宗でまったく宗派が違い、範囲を信達地方まで広げても、桑折町万正寺の観音寺(坂町観音)は浄土宗、国見町徳江の観音寺は真言宗とやはり異なる。信達地方の寺院は曹洞宗がかなりの割合を占めるはずなのだが、これはどうしたことだろう。廃寺になってなければいいのだが。
素朴な疑問を感じながら国道を北上。先ほど名前が出てきた岩谷観音から、本日のメインスポットである信夫山への登りにかかる。巷間言われるように確かに立派な磨崖仏だ。でも、先ほどの観音様の一件がどうしても気になって、案内板をチェック。予想はできたが、馬頭観世音や信達(準)坂東三十三観音との関連性は確認できなかった。
岩谷観音から更に登り、信夫山の北東部をめぐっている信夫山一周道路へと出、反時計回りに歩く。途中人家が2、3軒見られるものの、あとはひたすら山道。沿道には松が多くもう初冬だというのに落葉も殆どなく、右手に展開しているはずの麓の様子も殆ど確認することができない。
それでもしばらく歩いていると、突然右手の林が途切れ、麓の風景が見渡せるようになる。ちょうど福島商業高校の辺りだろうか。市街地ではあるがどういう訳かクルマの音は全く聞こえず、信夫山と高校との間を流れる松川の水音とそこで佇む水鳥の鳴き声だけが聞こえてくる。
そんな一角に、古峯神社(こぶがはら神社とも)が鎮座している。道路沿いに鳥居が建っていたが、社殿自体は道路から斜面を下った所にある。どうやら、信夫山北側の丸子(まりこ)から神社を経由して羽黒神社へと達する登山ルートがあるようだ。地図で見る限り信夫山北部から山頂付近へと到達するルートは確認できなかったのだが、歩いているとこうした発見が往々にしてあるものだ。
神社から少し歩くと展望台がある。信夫山第三展望台と書かれていたが、これもまた、地図には掲載されていない。でもここからは、福島市北部および西部の街並みとその背後にそびえる山岳、丘陵群をはっきり見渡すことができる。3月に訪れた第一、第二の展望台よりも眺望は良いように思われた。
展望台から先は右手に展開する麓の景色をしばし堪能できるのだが、しばらく歩くとまさに羊腸としか呼びようがないヘアピンカーブが続く。ここは本当に福島市中心部なんだろうかと思うほどだ。ここを登り切ると、3月にも訪れた羽黒神社の社殿入口となる。
羽黒神社から先は薬王寺を経て第一展望台まで歩いたが、3月にも歩いたので風景描写はそちらに譲り、ここでは割愛する。なお、3月に目の前を通りながら確認を怠ってしまった信達三十三観音の三番札所・羽黒山観音は、きちんとチェックしてきた。
第一展望台の自販機で水分を補充した後、信夫山東部のサミットである月山神社湯殿山神社へと、再び登りに入る。つづら折りの舗装道路が整備されているが、その間隙を縫うように丸太組みの階段が作られているので、そちらを登ってみる。最初のうちは意気揚々と登っていたが、既に1時間以上も山中をうろついていたせいもあり、すぐに息が上がってしまう。それでも何とか踏ん張って、これらの神社の社殿を拝むことができた。いずれも、羽黒神社よりかなり小さめの社殿である。信夫三山と言われるからそれなりに整備されているものと思っていたのだが、ちょっと拍子抜けだ。
更に東に歩いて烏ヶ崎展望台まで行き福島市西部の街並みを俯瞰した後、山下りに入る。麓に位置する福島第四中学校付近まで一気に降りる道だ。路面は露岩と落ち葉で構成されたダート以前の状態。前日の雨で若干濡れた落ち葉に滑ってしまい岩にお尻をぶつけることもしばしばで、ちょっと危険な道である。一応麓側からは月山神社湯殿山神社への参道である旨の看板が掲げられているが、正直お勧めできない。熟練者向けの道と言えそうだ。
ところで、今回の散歩の終着点であるが、実は、信夫山の北側に位置するヤマダ電機テックランド福島店で妻と待ち合わせをしている。下り坂に苦戦している途中、携帯が鳴る。「今どこにいるの? これからクルマでヤマダ電機に向かうからね。」妻からの伝言であった。