2010年2月6日 ~東邦銀行支店巡礼④ 川俣支店(前半)~

散歩を予定していた6日の朝が来た。
前日の夕方から降り続いていた雪の影響で、周囲は真っ白。どう考えても散歩を中止した3日よりひどい積もりっぷりである。
が、二回連続で散歩を中止し家の中で悶々とするのは、嫌だった。予定している川俣支店(111)までは無理かもしれないがせめて行けるところまで行ければと思い、午前5時半に自宅を出た。妻子はまだ寝ている。
桑折駅に到着。毎朝のことだが、駅構内には警官の姿がある。
「この雪の中ご苦労様です。お出かけですか?」と声をかけられる。
「ええ、まあ…」あいまいな返事。まさか梁川から川俣まで歩くつもりだなんて言えない。
5時41分発の電車に乗車し、東福島駅で下車。10分ほど歩いて阿武隈急行卸町駅まで行く。自宅からだと福島駅で乗り換えるよりもJR、阿武隈急行ともに運賃が割安になるので、伊達市方面への散歩の際はかなりの確率でお世話になる乗り継ぎだ。雪は相変わらず降り積もり続けているが、今のところ歩くのに支障はなさそうで、ちょっと安心する。
6時09分発の電車に乗り、梁川駅6時34分着。ワンマン電車だったので窓口で運賃の精算をし、外へ出た。夜が明けつつある梁川でも、雪は降り積もっている。
前回の散歩では帰りの電車に間に合うかどうか気が急いていたので駅周辺の風景に目を配ることがなかったのだが、改めて見ると、新興の市街地でありながらゴーストタウンにも似た状況。駅前で長らく営業していたセブンイレブンが閉店していたし、広瀬大通り沿いのロードサイドショップも、靴屋おもちゃ屋が従前の店名が消去されることなしに別の店へと衣替えしていた。住宅地にも更地のままの土地が多い。市街地北端の希望ヶ丘にも同様の傾向が見られるが、梁川は住宅地として魅力がないのだろうか。気になるところだ。
県道梁川霊山線に入り、南へと歩を進める。歩道が整備されているので、歩くには支障ない。路面を見ると、犬の散歩をしていたらしい足跡が残っている。全くの新雪ではないのが心強い。1キロほど歩くと、右手にこれまた新興住宅地の陽光台が姿を現す。梁川駅前や希望ヶ丘と比べると開発された時期は新しいはずだが、更地などは見られず住宅がびっしり建てこんでいる姿を見て安心。家々の屋根や壁の色は褐色系が多い。今は右も左も白一色だから、よく目立つ。
陽光台から先は歩道がなくなるが特に歩きにくいということもなく、旧保原町の金原田(かなはらだ)へと入る。ここからまず旧霊山町の中心地・掛田を目指す訳だが、ルートが二つある。ひとつは南東方向に延びている梁川霊山線をそのまま歩き赤坂の里森林公園を経て旧霊山町の山野川に出てから掛田まで進むルート、もうひとつは金原田からまっすぐ南下し伊達市斎場を付近経由して掛田へと入るルート。どちらにしようか迷ったが、距離が短い後者をチョイスする。
旧町境付近の丘陵にある斎場の脇を通り抜けて、旧霊山町へ。ほどなく歩くと掛田の町に入る。結構大きな町だ。それもそのはずで、掛田が町制施行されたのは1898年のこと。市制・町村制が施行され桑折、梁川、保原、川俣の4町が発足した1889年からわずか9年後のことである。
掛田もまた、梁川や川俣と並んで養蚕の盛んな町であった。特に1881年は、第二回全国蚕糸業共進会が開催され、日本初の養蚕学校である掛田養蚕伝習所が開設されるなどエポックメイキングになった年で、国内はもちろん海外にも名前を知られていたという。
が、現在の掛田には、東邦銀行の支店は存在しない。わずかに商店街の北にATMが設置されているのみである。ただ、商業施設や公共施設の内部に置かれることが多い店舗外ATMが単独で設置されるのは珍しい。もしかしたら、そう遠くない昔には東邦銀行掛田(霊山)支店があったのかもしれない。
時計を見ると、7時台半ば。日常生活は動き始めており、商店街には除雪に精を出す人も目立つ。「おはようございます。」歩道でそんな人たちと挨拶を交わす。歴史ある町だけあって、霊山には古い建物も多い。上手くプロデュースすれば町並み自体が観光資源になるかもしれないが、今のところその気運はないようだ。
市街地の南端にある伊達市役所霊山総合支所の前を通過。かつては霊山町役場だった建物で、壁面には旧霊山町の町章がいまだに掲げられている。そう言えば、この建物には以前、福島と相馬とを結ぶ東北中央自動車道の早期開通を訴える看板が掲げられていたのを思い出した。いつの間にか撤去されている。建設を諦めてしまったのだろうか。もっとも、現在福島と相馬を結んでいる国道115号線の交通量を思うと、この地域における高速道路の建設は無駄な公共投資以外の何物でもないと思うのだが。
その国道115号線を横断し、国道349号線へと入る。ここから川俣までは、ほぼこの道路を進むことになる。雪は相変わらず降り続けており旧霊山町だというのにそのシンボルである霊山も姿を現してくれないのだが、ここにきて小止みになってきたようだ。前途にやや光が差し込む。
8時近くになったので、そろそろ起きているかと思われる妻へ連絡を入れる。
「今霊山を歩いているよ。」「気をつけてね。」普通に会話を交わしたが、実はこの時点で妻は外の景色を見ておらず、カーテンを開けて一面の雪景色に腰を抜かしたそうだ。
確かに雪は積もっている。でも、思ったほど散歩に支障はない。同様に雪に見舞われた1月13日に比べると風がだいぶ穏やかなのと、雪自体に湿り気が少ないことが挙げられるとは思う。
霊山町と旧月舘町との境界は、パーシモンカントリークラブ。福島県信達地方には四つしかないゴルフ場の一つである。しかも、いわゆるバブル景気のころにオープンしたのは、ここだけ。白河やいわき、郡山に比べると、信達地方はゴルフ場が異常に少ない。この結果は、二つの視点から分析することができるかと思う。観光・リゾート施設として捉えるならば元々温泉や山岳リゾートが充実しているのでゴルフ場がなくても来訪客の欲求を満たすことができるというプラス面、接待・社交施設として捉えるならば経済活動が活発ではなくゴルフの需要が少ないというマイナス面。いずれが強く作用しているかは、私にはわからない。