2010年2月25日 ~東邦銀行支店巡礼⑦ 南福島支店~

今日は休日だったので、散歩に出掛けることにした。
前回の散歩から、中2日である。
今年に入ってからの散歩のローテーションを確認してみると、初回の1月13日から中6日、中9日、中6日、中5日、中9日と、イーグルスの岩隈のように故障がちな先発ピッチャーの登板間隔に似ている。それがいきなりリリーフ並みの中2日。40年前のエースなら黙って投げて結果を残したろうが、今日の私は耐えられるだろうか。
懸念材料はもう一つある。今回の散歩コースの大半が、国道4号線福島南バイパスだということである。前回の散歩の終盤でも二本松の町外れにある起点から安達駅近くまで歩いたが、通過するクルマの騒音がひどく、歩道は完備されているもののまともに歩けそうな雰囲気にはなかった。とにかく信号がなく交わる道路とはすべて立体交差という高規格道路だから、みんなビュンビュン飛ばす。警察関係者ではなくとも、厳しく取り締まればいい小遣い稼ぎになるだろうと思ってしまうほどだ。
が、弱音を吐いてばかりもいられない。今日の散歩は安達駅を起点とし南福島駅近くにある南福島支店(114)を目指す予定。しかもその後東福島(115)、泉(116)、福島卸町(117)と福島駅から北側の支店が連続するので、南福島駅ではなく福島駅まで一気に歩いてしまおうという魂胆だ。
前回の散歩と同じく、桑折駅発5時41分の始発電車に乗車。6時24分に安達駅着。小ぶりな駅舎だが、舎内に掲げられている「開業三十週(ママ)年」と書かれた写真を見ると、当時の駅舎が今と全く同じ姿で建っていることが確認できる。安達駅は1917年の開業だから、駅舎の建物は少なくとも築60年以上の年代物ということになる。駅前の庭園もよく整備されているし、そろそろ周囲から歴史的価値を求められてもいいように思う。
駅南側の踏切を渡って東進し、バイパスへ。早朝とはいえ、クルマの通行がそれなりにある。しかも大型車が多い。すぐそばを歩くのはやはり恐怖を感じる。そんな時はせめて景観だけでも楽しみたいと思うのだが、バイパスの路面は切り通しと築堤の連続であり、しかも天候も霧がかかっているため、眺めを堪能するに適さない。だからただひたすら、前を見て歩くのみである。恐らくクルマの運転手にとっても、同じ認識なのだろう。だからみんな飛ばすのだ。
そんな国道の歩道にも、街路樹が植えられている。ただし、枝が大胆に切られているため、今の季節は枯れ木のようにしか見えない。霧がかかっていると木陰から化け物でも出てきそうな風情である。確かに、枝が車道に張り出せば視界不良になるし、大量の落ち葉はスリップの原因になる。万事がクルマ優先の思想なのだ。こういった道路には街路樹ではなく花を植えた方がいいような気がするが、地形が災いしてか沿道にはロードサイドショップどころか人家も殆ど見られないので、世話する人もいないだろう。
そんなバイパス沿道において数少ない施設である道の駅あだちの構内を通り抜けると、二本松市から福島市へと入る。さあもうすぐ松川だ、医大(福島県立医科大学)だと心も弾むが、ここから先が意外に時間がかかった。地図で確認すると、東北本線奥州街道も旧国道4号線も両市の境界は境川ないしは水原川なのだが、バイパス沿いに限って言えば境界は水原川から2キロほど南なのである。距離感覚が若干狂う次第。
それでも何とか松川駅付近まで歩く。初めて沿道に住宅が建ち並ぶ風景に接する。集団登校中の小学生やヘルメットをかぶった自転車通学の中学生の姿も目にする。久しぶりの生活感。しかしそれは一瞬のことであり、バイパスは再び切り通しと築堤の中を駆け抜けていく。
更に30分ほど歩き、頂上に医大がそびえる丘陵の真下を通ると、福島市最大の新興住宅地・蓬莱ニュータウンが見えてくる。ようやく、町場らしい風景が展開するようになってきた。蓬莱の南側入口付近に、NECワイヤレスネットワークスの工場がある。従業員の駐車場は工場から離れた所にあるらしく、通勤する従業員が何人か歩道を歩いている。そう言えば、安達からここまでの間、歩道を歩く人影を一切見ていないことに気がついた。
通勤時間帯ということもあってか、バイパスを通るクルマも速度を落としつつあるようだ。恐怖感も、さほどではなくなる。そんな中を工場から2キロほど歩くと、新旧の国道4号線が交差する伏拝交差点。二本松市油井の交差点から13.2キロぶりの信号機であるが、ここから福島方面へ向かうバイパスはちょっと行けば信号機の連続。ロードサイドショップも多いのでクルマの流れが詰まることも少なくない。
南福島支店は旧道に面しているため、交差点を左折し、旧道に入る。交差点から700メートルほどは丘陵の斜面を巻くようにして急坂を下りていくが、歩道がなく散歩には適さない。幸い路肩に蓋がついた側溝があったのでそこを歩いてやり過ごすが、折悪く一部区間で改修工事中。現場の警備員の指示に従いながらそろりそろりと歩を進める。
坂を下りると、南福島の商店街に入る。この辺りは宿場町ではなかったはずだが一通りの店は揃っている。南福島支店もまた、その一角にある。到着時刻は8時52分。安達駅を出発してから2時間半が経過しようとしていた。店内に入ってまず驚いたのが、ATMの数の多さ。四つ並んでいたのだが、これまで回った支店のATMはそこまでなかったと思う。本店(101)を別格とすれば、保原(109)、梁川(110)、川俣(111)、二本松(113)の各支店が三つで、他が二つだったか。南福島の都市化が進んでいるせいもあろうが、近辺に工場が多いことも背景にあると思う。目についた工場を南から順に挙げると、森永乳業、NOK、ヤクルト本社パナソニック、そして日東紡。後二社には工場内に東邦銀行のATMがあるようなのであくまで推察だが、南福島支店においては、ATMで給料を引き出してニンマリする従業員の構図がよく見られるのかもしれない。なお、通帳末尾の端末記号・店番欄は「A114」。端末記号欄は飯坂支店(107)以来のアルファベットだが、「A」は初めてだ。
南福島は工場の他にもカーディーラーがやけに多いイメージを持っていたが、歩きながら路上観察してみると、接骨院鍼灸院の類も結構目立つ。これもまた、工場が多い街の特性ゆえであろうか。南福島は、調べれば調べるほど、スルメのように味が出てくる街なのかもしれない。次々回の散歩で蓬莱支店(119)に向かう際にこの街をまた通る。再訪が楽しみだ。
荒川を渡って福島の旧市街に入り、9時31分、福島駅着。