2010年3月18日 ~東邦銀行支店巡礼⑩ 福島市役所支店・福島中央市場支店~

18日がやってきた。
午前中の空模様は、修了式を迎える下の子を祝福するように晴れていた。式自体も厳粛に、滞りなく進行し、11時過ぎには終了。終始にこやかな表情だった下の子と一緒に自宅に帰り、昼食を摂った後、久々に散歩へと出掛けることにする。
桑折駅発13時13分の上り電車に乗車。福島駅で乗り換えて、13時35分、前回の終点だった南福島駅に到着。今日はここから、福島市役所(120)、福島中央市場(121)と、一般市民には縁の薄そうな支店を巡る。駅前に降り立った時点での空模様は薄曇り。午前中に比べれば雲は増えたものの、散歩には全く支障ない。
駅のすぐ北に位置する踏切を渡り、まずは東北本線及び東北新幹線の線路のすぐ西側を通っている道路を北上。福島市内と金谷川方面とを結ぶいわゆる「金谷川スカイライン」に通じる道だし沿道も住宅地だけあって通行量もそれなりにあるのだが、道路自体の整備状況はややお粗末であり、センターラインこそあるものの歩道は全く整備されていない。歩きにくいことこの上ないが、そもそも南福島一帯で歩道が整備されている道路は、新旧の国道4号線、来週末に東北本線及び東北新幹線とのアンダーパスが開業する都市計画道路小倉寺大森線、あとどこかあっただろうか… という状況。今歩いている道路と交差する道も、幅5メートルに満たないような隘路ばかりである。
福島市の街路事情の悪さは、南福島界隈に限ったことではない。例えば次回の散歩で訪れる予定の渡利支店(124)の周辺など、4号線及び新旧の114号線を別格とすれば、県道ですらセンターラインや歩道が未整備の箇所が少なくない。そんな地域の最奥に位置する花見山公園がここ十数年春になると降って湧いたように観光客で賑わうようになったが、あまりの隘路ぶりに観光バスで訪れる団体客をさばききれず苦慮しているのが現状だ。
そんなことを考えながら歩き続けていたのだが、、国道115号線をアンダークロスした先から、片側だけであるがようやく歩道が備わる。クルマの心配をせずに済み、ホッとした次第。
旧国道115号線との交差点を渡ると、荒川に架かるあづま橋に差し掛かる。1988年に架けられた比較的新しい橋で、歩道もタイル敷き。しかも歩道上には3体ほど、間隔を置いて裸婦像の彫刻が設置されている。芸術については完全に門外漢だが、さほど長くはないあづま橋に裸婦像が3体というのは多すぎるような気がする。問題は、これらの像が東北新幹線の車窓からモロに見えてしまっていること。一見の乗客から「福島市はこういった嗜好のある街なんだ」と思われないか、非常に心配になる。
あづま橋を渡ると福島の中心街。矢剣町の福島ガス近くで右に折れ、奥州街道などを横切って、前回の散歩でも訪れた天神橋の袂へと出る。前回は橋を渡って対岸の渡利へと出たが、今回は橋を渡らず、阿武隈川の河畔へと出た。この辺りの阿武隈河畔は、近年護岸工事が完成し、市民の憩いのスペースとなっている。私が訪れた際も、散歩中と思しき人影を数人見かけた。嬉しいことである。
が、この河畔が「隈畔(わいはん)」と通称されていることについては、純個人的な感想ではあるが、若干の違和感を禁じえない。どうも語感的に「猥褻」「猥雑」「猥談」などの熟語を連想してしまうのだ。もちろん「隈」と「猥」は別の文字だから、そのように連想するのは連想した側の品性の問題に帰結するのだろうとは思う。が、誤解を招きやすい語感そして字面であることは事実だ。先ほど目にしたあづま橋の裸婦像群と合わせて、福島市に対する誤解を深めてしまう可能性だってある。ひょっとしたら、隈畔に代わる通称、愛称が必要になる時がくるかもしれない。
大仏(おさらぎ)橋の袂で国道4号線に出て北上した後、北裡商店街で国道の一本西側を南北に縦貫している福島市道仲間町春日町線へと入る。この道は福島第二小学校、福島地方裁判所、桜の聖母短大、小学校など行政、文教施設が集中する一帯を貫いて、信夫山の麓にある福島県文化センターへと続いている。そして福島市役所も、その一帯に所在している。
市役所の正面玄関前に到着。この建物を正面から拝むのは、十何年ぶりだろうか。実は、主だった道路をたどって福島市役所まで行くとなると、裏口の方がお世話になる確率が高いのである。福島交通の市役所前バス停も、裏口に面して設置されているほどだ。
だからであろうか、市役所の外観は思った以上に風格めいたものが感じられた。中に入ってみると、昭和というか、戦後の匂いすらする。それもそのはずで、この建物は、1952年に建てられたもの。これより15年も前の1937年に建てられた会津若松市役所には敵わないが、相当な年代物なのだ。
が、この建物とは間もなくお別れすることになる。現在東隣のスペースに新しい市役所庁舎が建設中であり、本年中に完成予定とのこと。その後現庁舎が取り壊されて別の新庁舎が建設される計画となっている。だから、福島市民ではない私にとっては、今日が現庁舎を訪れる最後の機会である可能性が高い。来訪目的地である福島市役所支店の他にも庁舎内をいろいろ見て回った。トイレにまで入ってしまった。なお、通帳末尾の端末記号・店番欄の記載は「1120」であった。
市道をさらに北上し、文化センターの前まで出る。ここから先は、水辺空間がよく整備された祓川に沿って歩く。近くに高校があるせいか、部活動でランニング中の高校生と何度かすれ違う。一般のジョガーも何人か見かけた。先ほどの阿武隈河畔といい祓川といい、よく整備された空間には自然と人が集まるものなのだろうか。それとも逆で、人が集まるから景観が整備されるのか。
信夫山の麓を巻くように流れている祓川に沿って2キロ近く歩くと、松川の河川敷に突き当たる。ここから先は一旦国道4号線に出ざるを得ない。でないと松川を渡れない。橋を渡り終えた時に時計を確認すると、3時を少し過ぎたところであった。
空を見る。出発した時に比べると雲は多少増えたが、雨が降り出す雰囲気はない。天気予報が良い方向に外れてくれて助かった。ちょうど小学校の下校時刻にあたっており、十数人の小学生とすれ違う。学年末ということもあってか、いずれも学校で制作した作品を入れた袋を手に持って歩いている。もし雨が降っていたならば、彼らの帰り足は大変な事態になるところであった。
福島市道鎌田笹谷線との交差点を左折し、次の目的地である福島中央市場支店へと歩を進める。取り立てて特徴のない住宅地をしばらく進むと、右手に福島市中央卸売市場の広大な敷地が見えてくる。考えてみれば、前々回の散歩の終盤に福島卸町支店(117)を訪れた際にも、この敷地の東側を通った。福島中央市場支店と福島卸町支店の間は、500メートルほどしか離れていない。商業集積が進んでいる中心市街地を除けば、恐らく最短の支店間距離であろう。
市場の朝は早いのでATMもそれに合わせて早寝早起きなのかとの懸念があった、訪れてみるとちゃんと稼働していた。ただし、営業時間は午後6時までであり、他店より1時間早く閉まるとのこと。市場関係者以外の利用が少ないのか、はたまた福島卸町支店とのバランスを考慮したのか、機械は一台しかなかった。1,000円を入金。通帳末尾の端末記号・店番欄の記載は「1121」で、福島市役所支店と似たり寄ったり。
福島中央市場支店の前から市道を更に西進すると、次の目的地・笹谷支店(122)の近くまで行くことができる。もし午前中の散歩であるならば当然訪れ、更に次の西福島支店(123)まで歩き通すところであるが、今はもう夕方。そこまで歩いてしまうと日没を迎えてしまうかもしれない。また、雨に遭遇する可能性もある。今日はここで散歩を打ち切り、「隈急」ではなく「阿武急」と略称されている阿武隈急行卸町駅の前を通って東福島駅へと歩いた。