2010年6月27日 ~東邦銀行支店巡礼(22) 船引支店(前半)~

前回の散歩で磐越東線要田駅まで歩いたが、桑折駅からこの駅までの片道運賃は、1,280円かかる。今回、次回は船引(208)、小野(209)と更に遠方へと足を運ぶことになる訳で、当然、運賃は更にかかることになる。
従って、今回の散歩は、土日祝日のみ利用可能な「小さな旅ホリデー・パス(南東北エリア)」が使える日まで待つことにした。この切符を利用すれば、1日2,400円で南東北エリアの普通列車が乗り放題になるからだ。ただし、南東北と銘打ちながらもJR東日本水戸支社が管轄する水郡線福島県内の常磐線は利用できず、今回利用する磐越東線も、全線仙台支社管轄にも関わらず小野新町以東は利用できない。
そんな訳で、散歩日を27日の休日に定め、前日までに切符を買い準備万端でいたのだが、折悪いことに当日の天気予報は雨だという。微妙な天候の中散歩を強行した揚句結局濡れ鼠となってしまった5月26日のような仕儀になる可能性もあったが、下準備がそれなりに入念なものであっただけに、歩きたい気持ちの方が上回っていた。
いつものように、桑折駅発5時41分の上り始発電車に乗車。早起きしたしせめて郡山までは寝て過ごそうと思っていたものの、天候が気になって車窓に目が行ってしまいがち。福島市内は雨。特に丘陵に囲まれた金谷川では強く降っており頭を抱えたものの、南下するごとに徐々に雨脚は弱まっていき、一安心する次第。
郡山で列車を乗り換え、7時18分、一喜一憂の行程の終着となる要田駅へ。はてさて空模様は如何に?とホームに出てみると、残念なことに霧雨模様。でも、歩けない天候ではないので、ここは強行突破。前回歩いた主要地方道浪江三春線から、国道288号線へと出る。
この辺りの国道は、磐越自動車道の船引三春インターチェンジに近いものの、沿道の風景は田畑と雑木林が多くを占め、交通量もさほど多くない。霧雨でメガネのレンズが曇りがちなことも相俟って、風景を見る目にも力が入らない。天気が良ければ前方には田村富士と形容される片曽根山が見えるはずだが、長い裾が富士の片鱗を見せてくれるばかりで肝心の頂上は雲に隠れて全く見えない始末である。
単調な風景だった沿道にロードサイドショップが徐々に増えていき、大滝根川を渡ると船引の街。三春と並び田村地方では大きな街のひとつのはずだが、ここに至るまでの行程が行程だっただけに、特段の特徴もなく至極平々凡々とした街並みに感じる。
もっとも、それも当然なのかもしれない。現在田村市の市役所所在地でありそれ以前は福島県内で最も人口の多い町だった時期もある船引であるが、町制施行は1934年で、比較的新しい。ちなみに、かつての田村郡における町制施行の順番は三春(1889年)、小野新町(1896年。現・小野町)、常葉(1898年。現・田村市)、守山(1908年。現・郡山市)と続いており、船引はこれらよりかなり遅れての町制施行となる。
実は、このことが、以前から気になってはいた。船引はどうして、これほどまでに急速な発展を遂げたのであろうか、と。いくつか資料にあたってみたのだが、「磐越東線が開通し船引駅が設けられて(いずれも1915年)以降都市化が進んだ」云々という漠然とした表現しか見当たらない。だからこそ現地で何か手掛かりがあれば…と思っていたのだが、そんなものはありそうにもなかった。
いや、一つだけあったか。商店街が展開している国道に、歩道が整備されていないのだ。正確に言えば片側にだけ歩道があるのだが、ある程度大きな街の中心商店街でそんな風景を目にした記憶は殆どない。せいぜい名取市の中心商店街が頭に浮かぶぐらいである。つまりそれだけ、市街地の拡大にインフラ整備が追いつかなかったのか。それともただ単に、整備を怠っているだけなのか。
東邦銀行船引支店は、そんな商店街の一角にあった。幸いにも、歩道がある側の沿道であった。
さっそく入金といきたいところなのだが、時計を見ると、まだ8時半を過ぎたばかり。日曜日の今日は、ATMコーナーは9時にならないと開かない。
そこで、船引の街をしばし散策することにした。まずは、船引支店のすぐ東側にある交差点を左折し、船引駅方面へと歩を進める。こちらもまた変哲のない商店街であるが、街並みを縫うようにして流れている大滝根川を渡ると商店の密度が濃くなる。「栄町サン・ロード」と銘打った街灯が立ち並ぶ姿を見ると、この通りが船引随一の繁華街なのであろう。やはり船引は、駅を中心に街並みが形成された所なのであろうか。これまで通ってきた須賀川や三春が代表例であるが、宿場町や城下町を起源とする街は古くからの市街地の整備が優先され駅前の整備は後回しにされがちな傾向がある。が、船引は、その関係が逆転しているのだ。
とは思うものの、トータルで見ると、船引の街並みは、決して良いものとは言えない。コミュニティプラザが併設された船引駅の駅舎こそ市の代表駅の風格を有していたものの、栄町サン・ロードもまた歩道が片側にしかないし、何より大滝根川に親水空間の整備が全くと言っていいほどなされていないのが致命的だと思う。一応河畔には桜並木があって花見の時期には賑わうようだが、せめて遊歩道ぐらいあってもいいだろう。
そんなことを考えながら街中を歩いていると、雨が完全にあがっていることに気がついた。街の真南に位置する片曽根山も、その全貌を現している。散歩を強行して良かったなと思う。9時になったので船引支店に行き、1,000円を入金。再び雨が降り出す前に少しでも小野支店の近くまで行かねばと、歩く足を速めた。
東部台という中心市街地の規模に比して大きめな新興住宅地の脇をかすめ、市街地の東南端にあるメガステージ田村というこれまた大規模なショッピングセンターが見えてきた所で国道と別れ、主要地方道船引大越小野線へと入る。主要地方道や県道の名前には大抵起終点の地名のみがついているものだが、この道路名に途中経由地の大越(田村市大越町)を敢えて入れているのは、船引と小野との最短経路がこの道路の西側を通っている国道349号線だからと思われる。
なお、この道路は、ほぼ磐越東線の線路に沿っている。だからであろうか、整備状況はあまり良くない。歩道も所々にしかなく、しかも側溝に蓋をしただけのもので非常に歩きづらかったりする。車道は一応センターラインこそ敷かれていたものの、磐城常葉駅の手前で渡る磐越東線の踏切は非常に狭く、クルマのすれ違いができそうにない。ちなみに、この踏切の名前が、なんと「第1小野新町街道踏切」。小野新町街道なんて街道があることは、初めて知った。