2010年7月28日 ~東邦銀行支店巡礼(26) 菜根支店・郡山市役所支店・桑野支店(後半)~

再びはやま通りとの交差点に差し掛かったとところで左折し、開成山公園の構内へと入る。最初に目に飛び込んできたのは、プールと陸上競技場。そしてその先には、今年リニューアルオープンした開成山野球場が見える。駐車場が少ないなどのマイナス面はあるものの、陸上競技場で練習に励む高校生の姿などを直に目にすると、街中にこのような施設があるのは市民とスポーツとの絆を確実に強めているのではないか、とは思う。
野球場の外野席を取り巻くように続いている遊歩道を歩くと、五十鈴湖を中心とした公園スペースに出る。湖も湖畔の木々もそれなりに整備されてはいるものの、率直に言って「ただあるだけ」の感がなくもない。象徴的なのが湖畔にベンチがあまり置かれていなかったこと。だからであろうか、湖畔では散策している人も休憩している人も数えるほどしかいなかった。
北側を通るさくら通りに面した出入口にて、公園を辞す。郡山市役所は、さくら通りを挟んですぐ目の前である。一般道路を挟んで東側が1968年に竣工した本庁舎で、西側が1993年に竣工した分庁舎。どちらの庁舎に支店があるのかは事前に調べていなかったが、とりあえず、表敬訪問の意味を込めて、本庁舎の正面玄関から入ってみる。郡山市に居住した経験はないから、市役所の内部に入るのは初めての経験だ。
1月13日に県庁支店(103)を訪れた時のように本庁舎に支店があるものとばかり思っていたら西庁舎にあった、なんて事態になる懸念はあったものの、幸い支店は本庁舎の1階にあった。ただし、店内に唯一設けられているATMが、故障したのか全く稼働していない。
故障が治るまで待っている訳にもいかないので、窓口で直接入金せざるを得ない。東邦銀行の支店を訪れるのは郡山市役所支店で43店舗目になるが、通帳を作成した本店(101)を別にすれば、こういう事態になったのは初めてだ。毎回毎回異なる支店のATMで1,000円ずつ入金されている通帳を目にした行員は、私のことをどのような人物に感じるだろう。そのことを考えると気恥ずかしさが先に立つ。
金票に必要事項を記入し、通帳と1,000円とを添えて、エイヤッと窓口に提出。構内には数人の客がいたのである程度待たされることを覚悟していたが、意外にも2、3分で窓口氏に呼び出される。入金済の通帳を渡された際に言われたのは、「ありがとうございました」の一言だけ。通帳の内容には一切触れず、事務的に処理してくれたことには感謝したい。
さて、次は本日3支店目となる桑野支店。まずは、郡山市役所の本庁舎と分庁舎との間にある一般道路を北上する。この道路には「あさひ通り」との通称があるらしいが、それらしい案内板や表示は一切見当たらない。沿道には、郡山市関連の行政施設の他、飲食店が多く展開。考えてみれば、25日にグリーンカレーを食べに訪れたばかりの郡山トンチキていも、この道路からつかず離れずの場所にあったはずだ。
そんな一角でひときわ目立つ建物が、郡山郵便局であろうか。福島県全域を管轄する郵便事業統括支店(郵政民営化以前の地域区分局)でもある。郵便番号から推察するにかつての福島県内での地域区分局は郵便番号960の福島中央郵便局及び郵便番号970のいわき郵便局だったはずだが、近年郡山郵便局に統合された模様だ。県の中央に位置する郡山に拠点が置かれるのは郵便配達の効率上は理解できる。なお、統括支店が県庁所在地に設置されていないケースは、福島県の他、三重、鳥取、山口、佐賀、長崎の各県で見られる。いずれも県庁所在地が県の端に偏っているか人口が少ない地域である。
「郡山=福島県の中心」という構図は、あさひ通りを更に北上しうねめ通りとの交差点に至ると、よりハッキリとした形で現れる。というのも、交差点に面して、福島県を管轄する民放局の一つ・福島放送の社屋があるのだ。福島県内には四つの民放局があるが、そのうち福島放送福島中央テレビの二局が郡山に所在する。これもまた、全国的には珍しい事例と言えよう。
桑野支店は、うねめ通り沿い、福島放送の並びにあった。店の裏手にあるATMコーナーにはATM機が5台並んでいる。東邦銀行の支店のATMコーナーににおけるATM機の数は2~3台、多くても4台であり、5台というのはなかなかお目にかかれない。恐らく利用客の多い店舗なのだろう。
さて、これで今日の支店訪問は終了。郡山駅方面へと戻るうことにする。まずは、うねめ通りを内環状線との交差点まで歩く。沿道はロードサイドショップばかり。しかも目の錯覚なのか実際にそうなのかわからないが、国道49号線沿道のロードサイドショップよりも規模が大きい店舗が揃っているような気がする。振り返ってみると、前回歩いた安積地区、特にブッグパレットふくしま近辺のロードサイドショップもまた、規模が大きいものが多かった。ビッグパレットふくしま周辺では郡山市の主導で副都心空間の整備が進められているそうだが、うねめ通り近辺でもかつてそういう動きがあったのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に「暑さ」を感じる。そう言えば、前回の散歩とは違い、今回の散歩では照り返しの少ないカラータイル舗装の歩道や樹木が生い茂る公園の中を歩く機会が多かった。安積地区と似たようなロケーションを有するうねめ通りを歩いて初めて、これらのような「街に潤いを与える」と俗に呼ばれるインフラが、単なる口先だけのお題目で整備されている訳ではないことを体感した次第である。
アスファルトの照り返しが激しいうねめ通りを歩いていてしんどくなった訳ではないが、今回の散歩の締めもまた、まさに潤いのフレーズがマッチするスポットを歩くことにする。それは、西ノ内せせらぎこみち。せせらぎこみちとは、1990年代以降郡山市が整備を進めている水辺空間、緑地空間と一体化した遊歩道で、西ノ内の他に開成山公園の南側や更にその南西の台新地区にもある。交差点を右折して内環状線に入り300メートルほど歩くと左手に案内板が見えるので、これに従って路地を分け入る。更にしばらく歩くと、件のせせらぎこみちの入口が現れる。
西ノ内せせらぎこみちは、スーパーの駐車場の裏手など殺風景な場所を通る箇所もあるが、その大半は、住宅の裏庭を縫うように通じている。歩いていると、よくぞ街中にこんな素晴らしい遊歩道を整備してくれたな、と強く思う。幼少の頃住んでいた国分寺市にあるお鷹の道に通じるものがある。誇張ではなく、懐かしい匂いがした。
私と同じく西ノ内せせらぎこみちに愛着を感じている市民は少なくないようで、全長1キロに満たない遊歩道を通過する間に、何人もの人とすれ違った。散策中の老夫婦、犬の散歩をしている中年女性、路傍の石に腰掛けて読書にふける中年男性、虫取り網を手にした母子連れ、遊歩道入口付近に設けられた東屋で雑談を交わしている学生風の若者… いずれも生活感あふれる光景であり、閑散としていた五十鈴湖畔とは好対照のように感じられた。