2010年8月19日 ~東邦銀行支店巡礼(28) 郡山東支店・須賀川東支店・鏡石支店(後半)~

御代田の集落を通過し、更に南下する。もっとも、この辺りの道路の殆どは、クルマのすれ違いも難しそうな隘路ばかり。下手すると、一番まともな道路が阿武隈川の東岸を行くサイクリングロードのみちのく自転車道だったりする。これは決して誇張表現ではない。水郡線の鉄橋をアンダークロスした先に一般道路と並走している区間があるのだが、サイクリングロードと一般道路の幅が大差ないのだ。クルマの通行がないから安全性も保証できるし、御代田から須賀川市中心部までの区間はサイクリングロードを歩くのがベストチョイスだと考える。
が、実際に歩いてみると、周辺環境の未整備ぶりに驚かされてしまう。川の近くを通っているはずなのに雑木林に阻まれる箇所が多く特に郡山市域では川など見えやしないし、一般道路と交差する地点で時折段差が見受けられる。路傍の雑草も定期的に刈っているのかちょっと怪しいところ。今日の天気が曇りであることも相俟って、薄暗くて不気味な雰囲気が漂っている。
そのせいであろうか。利用者も全然いない。3キロほど歩いたが、出会ったのは、御代田の集落付近で犬を散歩させていた初老と郡山市須賀川市との境界付近でジョギングしていた中年のいずれも男性のみ。女性も子供も、そして、一番利用して欲しいはずの自転車の姿も、全く見られなかった。
いや、もう一人いた。それは、なんと軽トラ。このサイクリングロードはちょっと変わっていて「許可車に限り自動車通行可」なのである。沿道が雑木林だらけだった郡山市域に比べて須賀川市域では田んぼが多くなるので、どうやら農道としても活用されているようだ。たかが軽トラと言うなかれ。道幅いっぱいのスペースを占領しながら後ろからやってこられると、肝を冷やす。こんな状況が日常的に見られるのであれば、サイクリングを楽しみたい人から敬遠されるのも仕方ない面があるだろう。
サイクリングロード自体は須賀川市南端にある乙字ヶ滝の付近まで続いているが、須賀川中心市街地に近い位置に架かる下江持橋の手前でいったん一般道に合流する。この道を行き、下江持橋を渡る。この橋は阿武隈川と釈迦堂川とが合流する地点に架かっており、明後日の21日に開催される釈迦堂川全国花火大会の会場にも程近い。大会当日の夜間は車両通行止になる旨の看板が、橋上に数ヶ所掲げられていた。
下江持橋を渡った後は、釈迦堂川沿いにある花火大会のメーン会場付近を歩く。今は人っ子ひとりいない土手であるが、夜間照明用の裸電球が設置されるなど、準備は万端のようだ。「前日までの場所取り禁止」「花火を打ち上げる場所なのでここから先立ち入り禁止」など、立て看板も目立つ。うざったいほどであるが、釈迦堂川全国花火大会は一晩で実に30万人ほどの見物客が訪れる、福島県の夏における最大級のイベント。これぐらいしつこく立て看板を出さないと、効果もないのだろう。それにしても、30万人という数字はすごい。須賀川市の人口(約8万人)の4倍弱である。今年はスケジュールの都合で見ることはできないが、いつの日か、観光客であふれる須賀川
の街を見てみたい気がする。
ただし、今日の須賀川は、観光客など全くおらず、平々凡々としたものである。須賀川東部環状線に架かる未来大橋周辺の一帯は、どこを向いてもロードサイドショップばかり。ケーズデンキ、リオン・ドール、極めつけはユニクロ洋服の青山西松屋ツルハドラッグなどが一ヶ所に集約された大型SC・ロックタウン須賀川がデンと構えている。6月4日の散歩で須賀川市街の西側を縦貫している国道4号沿いに赤トリヰグリーンモールやヨークベニマルが出店しているのを目にしていることもあり、供給過剰じゃなかろうかと感じる。
その後も須賀川東部環状線を南下。主要地方道須賀川三春線を渡るとしばらくは翠ヶ丘公園や国立病院機構福島病院須賀川高校など商業とは無縁の施設が続くが、そこから先は再びロードサイドショップが増え始める。何の因果か、福島市に拠点を置くスーパー・いちいまで出店していた。いちいは極端なまでに福島市へのドミナント出店戦略を進めているのだが、離れ小島のように須賀川市と鏡石町に出店している。この辺りは、わざわざ出店するほど旨みのある地域なのだろうか。いちいの少し南側にはカワチ薬品、また、須賀川高校の裏手、須賀川東部環状線から若干東に離れた場所にはまたまたリオン・ドールが出店しているので、やはり供給過剰ではないかとの疑念を強くする。
本日2つ目の来訪店舗となる須賀川東支店はこの一角、国道118号線との交差点に面して建っている。周囲のロードサイドショップが広々とした駐車場を備えているのとは対照的に小ぶりな店舗で、ATMコーナーも二つだけ。支店というより有人出張所のような雰囲気だ。とは言え、ここを来訪したことにより訪問済み店舗は49となった。区切りの50店舗まで、あと一息だ。
ここで、時計を見る。10時20分を回ったところであった。鏡石駅を11時19分に発つ下り電車で帰る計画を立てていたので、歩くペースを少し速めなければならない。国道118号線以南の須賀川東部環状線沿道は市街地が尽きて田んぼや雑木林が増えてくることもあり、左右をキョロキョロ見ないでまっすぐに南へと歩を進めた。
それでも、須賀川東部環状線が国道118号線のバイパスに合するT字路では、右手に展開する大型SC・メガステージ須賀川に目を奪われずにはいられなかった。こちらの核店舗はダイユーエイトヨークベニマルスーパースポーツゼビオと地元企業が中心。SCとはいえ応援したくなる陣容だ。が、ロックタウン、メガステージと、人口8万の街に大型SCが二つもあるのは、やはりおかしい。共倒れにならなければいいが…との懸念が、頭をよぎる。
118号線バイパスを西進。東北本線をアンダークロスした先で左折し、奥州街道へと出る。須賀川市と鏡石町の境界付近に、一里塚が往時の姿のまま残っている。毒々しい色彩のロードサイドショップを連続で見せられた我が目にとっては、一服の清涼剤。残された時間は少ないけれど、頑張って歩ききるぞという前向きな気持ちになった。
とは言うものの、時間がないというのは切ないことだ。沿道を見渡す余裕が殆どなくなっている。鏡石町北部の鏡田地区は宿場町ではなかったのだが、沿道には整然と住宅が建ち並んでいる。じっくり見ることができれば町の成り立ちも推測できたろうにと悔やまれるところだ。
しばらく歩くと徐々に商店が増えていき、鏡石町の中心街に入る。中心街と言ってもスーパーはいちいだけで小ぢんまりとしたものなのだが、金融機関の支店が意外に多い。福島縣商工信用組合須賀川信用金庫、そして東邦銀行。とりわけ東邦銀行の位置は、奥州街道鏡石駅前から延びている道路が直行する交差点に面し、町役場の斜向かいという町内の一等地にあった。鏡石に限らず、小都市や町にある東邦銀行の支店は、ほぼ100%小歩地の目抜き通りや一等地に所在している。
そのことを嬉しく感じながら、ATMで1,000円を入金。通帳残高に「50,000」の文字が記される。足掛け7ヶ月で到達したこの数字。しばし喜びを噛みしめていたいところであるのだが、時計を見ると、11時10分を過ぎている。ヤバい! と駆け足で鏡石駅へと向かった。息を切らして走りながら、跨線橋を渡ってホームへと着く。10人以上はいたであろうか、既に客が待っていた。間に合って良かったなと胸をなで下ろす。
電車が来るまでの間、鏡石町商工会の事務所が併設されているため町の規模に比して大きめな駅舎をボーっと眺めていると、壁面に唱歌「牧場の朝」の歌詞が掲げられているのが目に入る。この曲の舞台となっている牧場は、駅の東方2キロほどの所に位置する岩瀬牧場。次回の散歩では、その岩瀬牧場の前を通る予定だ。