2010年8月22日 ~東邦銀行支店巡礼(29) 郡山荒井支店(後半)~

奥州街道を北上し、釈迦堂川を渡って須賀川の駅前に出る。
昨夜の花火大会で使用された川への転落防止用のロープや車両通行止の看板が、まだそのままになっている。それは理解できるが、今朝の須賀川には、花火帰りとおぼしき観光客の姿が全然見られなかった。人口の4倍弱の集客力があるイベントだから、市内のホテルに泊まった客も一定数いるだろうと思うのだが。
須賀川以北の奥州街道は県道須賀川二本松線にほぼ沿っているが、須賀川駅から北へ3キロほどの地点を流れる滑川以南に関しては、阿武隈川東北本線に沿っている県道ではなく、その西側の丘陵上を通っている。ただし、沿道の大半は新興住宅地や工業団地であり、街道らしさは殆ど見られない。わずかに、宮の杜という新興住宅地を過ぎた先、滑川の南岸近くに、旧家が連続し往時を偲ばせる風景が見られるに過ぎない。
滑川を渡る直前で県道に合流。右手は東北本線の線路、左手は一面の田んぼだが、丘陵も見られる。その中腹に、清陵情報高校の校舎が建っている。どうしてそんな所に高校があるのだろうと思う。この辺りは土地区画整理事業東北本線の新駅設置の計画があるという話だが、遅々として進まない結果、高校だけが浮いた形になっている。
更にを北上し、東北本線、次いで水郡線の踏切を渡ると、郡山市に入る。時計を見ると9時50分。鏡石から既に2時間半も歩き続けていることになる。沿道風景は、田んぼが目立つ須賀川市域から一転、住宅地へと変わる。この辺りは、奥州街道の笹川宿があった地域でもある。
その笹川宿、市境から1.5キロほど北上した先の安積永盛駅の周辺に展開しているものとばかり思っていたのだが、歩いてみた感覚だともう少し南、福島交通の笹川バス停周辺の方が、宿場町らしさが残っているように感じる。逆に駅周辺は、取り立てて特徴のない商店街。木造の駅舎に歩調を合わせるかのように、古びた雰囲気の商店が軒を連ねている。
ところが、駅から200メートルほど歩くと、そんな雰囲気を破壊するかのように、ケーヨーデイツーのどでかい店舗が、左手に現れる。そして、そのすぐ先の交差点では、これまた街並みに不似合いな4車線道路が左に分岐している。この道路は4車線を保ったまま、東北自動車道の郡山南インターチェンジまで続いている。奥州街道をもうしばらく歩きたい気持ちが強いのだが、郡山荒井支店はこの道路を進んだ後内環状線に入ってすぐの地点にあるため、交差点を曲がらざるを得ない。
4車線道路は、交差点を曲がるとすぐに高架へと上がり東北本線の線路をオーバークロスするが、またすぐに坂を下り、国道4号線との交差点に差し掛かる。交差点の右手には、7月21日に訪れた安積支店(211)が見える。そう言えば、今日は6月4日に訪れた須賀川支店(206)の前も通った。なんだか同窓会にでも出席したかのような気分になってくる。
が、私の進む先は、国道4号線ではなく、郡山南インターチェンジへと続く4車線道路。ここから先は、郡山南インター線という通称もあるようだ。安積行政センターや安積中学校などが建ち並ぶ郡山市安積地区の行政の中心地を通り抜け、笹原川を渡ると、いよいよ荒井である。ところで、笹原川であるが、都市内緑地の整備に力を入れている郡山市にしては珍しく、何の施策もなされないまま放置されている印象が残った。これはなんとかならないものであろうか。
荒井には初めて足を踏み入れたが、ロードサイドショップが意外に多いことに驚かされた。住宅展示場や結婚式場など、他地域ではあまりお目にかかれない施設があるのも特徴で、新しく若々しいイメージも感じた。
が、それ以上に目を引いた建物が、秋田銀行の郡山南支店であった。秋田銀行は、他県地盤の地方銀行の割には郡山に随分肩入れしているようで、なかまち夢通り、うねめ通りの桑野支店(215)向かい、そしてここ、荒井と、市内に3ヶ所も店舗を有している。また、うすい百貨店のメインバンクであることでも知られている。
郡山と秋田銀行との関わりは昭和時代初期まで遡るというが、それにしても、不思議な密着ぶりである。ただ、郡山は秋田銀行に限らず周辺各県の地銀、第二地銀にとっても魅力的な市場であるようで、秋田銀行をはじめ、北日本、七十七、山形、荘内、常陽、足利と実に7行が進出している。この数字は、仙台市(14行。なお、大東銀行を除く東北地方の地銀、第二地銀のすべてが進出している)に次いで、東北地方では2番目に多い。
そんな荒井の景色を堪能しながら、内環状線との交差点を右折。こちらもロードサイドショップが多いが、飲食店の比率がやや高いようだ。こんな所に銀行の支店があるのはロケーション的には少々変な感じもするが、東邦銀行のみならず福島銀行の荒井支店も進出しているので、それほど奇異に映るという訳でもない。
ただ、東邦銀行の「郡山荒井支店」という店名には、若干の違和感を覚える。福島銀行の方はただの「荒井支店」なのに、どうして東邦銀行には「郡山」がつくのだろう。中町支店(103)と郡山中町支店(201)、泉支店(116)と
 いわき泉支店(614)のように同名店を区別するために都市名や地域名を冠するのなら理解できるのだが、郡山荒井支店以外に荒井の名がつく支店は存在しないので、蛇足のような形になっている。いま一つの可能性としては、福島市南西部の荒井地区にかつて支店の新設が検討されたことがあるかもしれない、ということだろうか。まあ、いずれにしても推察だ。命名の真相はよくわからない。
ATMで現金を入金し、記帳された金額を確認する。昨日付で、利息の入金があったことを知る。金額は、4円。あっちこっちと50店舗以上歩きながらコツコツ貯めてきた結果にしては少々少ない感じはしたが、初めての利息はやはり嬉しいものだ。これで、預金残高は、51,004円となった。
郡山荒井支店を辞し、更に内環状線を北上。川沿いの木々が木陰を形成し涼しげなイメージを演出している南川を垂涎の眼差しを注ぎながら渡り、静御前通りとの交差点に出る。この交差点は、7月28日に菜根支店(213)から郡山市役所支店(214)へ向かう際に通った。このまま内環状線を北上するとその時とルートがかぶってしまうので、右折して郡山駅方面へと向かう。
ところで、今「静御前通り」と書いたが、この道路名称は、国道49号線以東では殆ど使われていない。以前呼ばれていた「郡女通り」の方が通りが良いようだ。「郡女」とは沿道の山根町に所在する郡山女子高校のことで、1998年に共学化されたことに伴い郡山東高校へと改称した経緯を有している。だから通りの名前も変更せざるを得なかったのだが、静御前通りの名前が定着するのはいったいいつのことだろう。
そんなことを考えながら住宅街が続く通りを東へと進むと、昭和通り(国道4号線)との交差点に差し掛かる。左手には、郡山南支店(204)。ここを訪れたのは5月13日。もう3ヶ月以上前のことだ。あの時は郡山ブロックの支店を全部回れるかどうか不安な気持ちもあったのだが、今や残る店舗はあと五つ。残党を追い詰めた格好だ。
次回に西ノ内(226)、希望ヶ丘(227)、富田(228)の3支店、次々回に郡山総合卸市場(229)、ローンプラザ須賀川(230)の2支店を訪れれば、郡山ブロックは全店舗制覇となる。あと少しという地点までたどり着いたが、いざフィナーレが近づいてくると、まだまだ歩き足りないような気がしないでもない。