2010年11月28日 ~仙台銀行支店巡礼⑤ 卸町支店(前半)~

前々回の散歩の際に小田原東丁の踏切で遭遇した勤務先のベテラン女性従業員は、私と遭ったことに相当驚いていたらしい。自分が普段行動しているエリアの中に福島県に住んでいる私がズカズカと立ち入っている訳だから、そりゃシュールな話だとは思うし、驚くのももっともだ。
だから、その驚きを他の従業員に話してしまったりもする。話を聞いた複数の従業員が「どうしてあんな所にいたの?」私に質問を浴びせてくることもあった。仕方なく、ウォーキングが趣味だという話をせざるを得なくなる。もっとも「仙台銀行の支店巡りをしている」とは口にしなかったが。
そう言えば、質問してきた従業員の一人が、宮城野区萩野町在住であった。萩野町は今日の散歩で訪れる卸町支店(212)のすぐ近くに位置し、間違いなく通過する地域。万が一、遭遇してしまったらどうしよう… 勤務シフトをこっそりチェックし、今日が出勤日であることを確認しては一安心する小心者の私なのであった。
そんなどうでもいい事情は脇に置いといて、今日の散歩コースを紹介すると、前回の終点・多賀城駅から西進して卸町支店に立ち寄った後、次の目的地・中山支店(213)への玄関口に位置する北仙台駅まで歩くコースとなる。前回の長町駅→苦竹支店(210)→多賀城支店(211)→多賀城駅というルートと合わせると、東を上にして「ℓ」の字やピンクリボンのマークを描くような形になっている。
今回も桑折駅発6時29分の下り始発電車に乗り、7時40分に終点の仙台駅に到着。仙石線の地下ホームまで歩いて7時46分発の電車に乗る。平日朝の仙石線下り電車は沿線にある高校の生徒が多く乗車しギューギュー詰めの状態になることが多いが、今日は日曜日で車内も閑散としている。ただし、沿線のどこかで大会が開催されるのか、ジャージ姿の中学生の姿がやたらと目についた。面白いのは、彼らの大半がMikasaのナイロンバッグを提げていたこと。仙台都市圏の中高生の間で同社製のバッグが流行していることは知っていたが、同社の本社がある広島から遠く離れた仙台でどうしてそんな現象が発生しているのかはさっぱりわからない。
8時07分、多賀城駅に到着。七ヶ浜町方面へのバスが発着する駅前広場を通り過ぎ、砂押川を渡り、国道45号線を横断。6車線の幅員を誇る主要地方道仙台塩釜線へと出る。沿道はロードサイドショップが建ち並んでおり、その中核となる店舗は1993年にオープンしたジャスコ多賀城店。同店の出店以降、イオンは泉区南中山、利府町、富谷町、名取市など仙台近郊に大型ショッピングセンターを続々オープンさせており、ロードサイドにおける主導権を握った感がある。
仙台臨海鉄道の高架橋をくぐると、仙台市宮城野区に入る。左手遠くに仙台港周辺の工場群が見えており、この辺りの沿道も工場や倉庫が多い。平日にはそれなりの賑わいがあるのだろうが、今日は閑散としている。広々とした直線が続くこの道路がお気に入りなのか、バイク乗りの集団が爆音を立てて通過したりしている。
が、工業一辺倒だったこの地域も、2008年に三井アウトレットパーク仙台港、2009年にカインズホームケーズデンキを核店舗とするカインズモール仙台港が進出するなど、商業地域としての発展を見せつつあるようだ。更に2012年には、松島海岸駅前にあるマリンピア松島水族館がこの界隈に移転する計画という。
大型ショッピングセンターにアウトレット… 仙台都市圏の人口増加は頭打ちの様相を呈しつつあるが、郊外にせよ都心部にせよ、商業施設の出店ペースには落ちる気配が見られない。岩手、山形、福島といった隣県の顧客まで視野に入れての出店戦略が見てとれるし、実際福島市近辺など、購買層が仙台都市圏にかなり流出しているように感じる。
が、周辺各県がこの状況への対抗策を施したという声を耳にした試しはない。例えば福島市郊外に大規模な所っピンスセンターやアウトレットモールを誘致し仙台、山形、郡山の各都市圏から顧客を呼び寄せるといった戦略があってしかるべきだと思うのだが、当の福島県福島市がやっていることといえば、意地の悪い条例を作って伊達市へのイオン出店を阻害したり、ホームセンターが本業であり大型店経営のノウハウに乏しいダイユーエイトに核店舗を任せた商業施設をオープンさせたりと、ピント外れとしか言いようがないことばかりである。
三井アウトレットパーク仙台港の付近から、仙台東部道路の高架橋が近付き、仙台塩釜線の真上を通るようになる。この状況は七北田川に架かる高砂大橋を経て3キロほど続く。
その高砂大橋を渡った先、仙台コロナワールド前にある鶴巻交差点で右折。卸町支店に行くにはここから500メートルほど先になる賀茂皇神社前交差点を右折すれば卸町のメインストリートである卸町大通に直結し近道なのだが、沿道に東部工場団地支店(230)があるため、回避せざるを得ない。
なお、鶴巻交差点も賀茂皇神社前交差点も、接続する道路は4車線以上の高規格道路である。これから歩く鶴巻交差点側の道路は、都市計画道路の名称で言うと元寺小路福室線。前々回の散歩で無残な光景を見てしまった二十人町界隈における区画整理後のメインストリートとなる道でもあり、広瀬通や仙台西道路とも直結する予定になっている。現在鶴巻交差点から陸前原ノ町駅南側の宮城野区銀杏町までの区間は開通しているものの、その先の宮城野区五輪(ごりん)で用地買収が進んでおらず、全通までにはまだまだ時間がかかるものと思われる。
この道路は、鶴巻交差点から仙台バイパスまでの間は宮城野区扇町南部の工業地域を通る。日曜日だけあって人気がなく殺風景極まりない風景だが、その一角に、高速という会社がある。包装資材の専門商社という社名からは想像もつかない業務を行っており社屋もさほど大きくはないのだが、これが全国に営業拠点を有する東証一部上場企業だったりするから面白い。扇町周辺には他にも、いずれもJASDAQに上場している業務用食材卸のサトー商会や笹かまぼこ製造販売の鐘崎と「頑張る地元企業」が点在している。
仙台バイパスと交差する箱提交差点まで出たところでバイパスを500メートルほど南下し、卸町交差点から卸町大通に入る。右手には、前回の散歩でも付近を歩いた仙台市中央卸売市場。ここの構内には七十七銀行の支店はあるが、仙台銀行は出店していない。第二地銀の悲哀と言えなくもないが、近接する卸町に支店があるだけでも良しとしなければならないか。
定禅寺通に匹敵するほどの幅の広い中央分離帯を有する卸町大通を進み、卸町の中核施設である卸町会館前の交差点を左折すると、雑居ビルの1階に入居している卸町支店の看板が見える。卸町大通と交差する道は、東の杜大通という名前である。今日初めて知った。