2011年1月8日 ~仙台銀行支店巡礼⑩ 結局、長町南支店までは行けず(前半)~

年末年始を挟んで2週間ほどお休みしていた仙台銀行支店巡礼であるが、今日、今年一発目の散歩に出掛けることにした。
訪問先は、長町南支店(221)。前回の終点・愛子駅からは3時間以上を要するものと思われる。12月31日の日記でも少し触れたが、大崎八幡宮瑞鳳殿を経由し、1週間遅れの初詣を兼ねての散歩にする予定だ。5時50分に起床し、身支度をして、桑折駅発6時29分の下り始発電車に乗車。1時間ちょっと揺られて定刻7時39分、仙台駅に到着。
…とここまでは順調だったのだが、前回の散歩の際に引き続き、今日も仙山線のダイヤが乱れているらしい。上り電車の交換待ちで、仙台駅発7時58分の下り列車の出発が4分ほど遅れてしまった。前回は北山駅まで乗れば良かったのでそれ以上の実害はなかったのだが、今回は北仙台、国見と交換待ちでそれぞれ数分停車する羽目になり、遅延が10分以上に膨らんでしまった。もっとも、国見の次の交換駅となる陸前落合では、逆に上り列車を待たせてしまったようだ。単線区間は面倒なことが多いなと、改めて感じる。
結局、愛子駅に到着したのは、定刻から11分遅れの8時38分のことであった。改札を出、さて久々の散歩だと勇んで歩みだした矢先、重大なミスを犯してしまったことに気づく。
なんと、通帳を自宅に忘れてしまったのだ。
これも正月ボケの一種だろうか。今までにはなかった失態。頭の中が真っ白になる。駅前広場から南にまっすぐ延びている県道秋保温泉愛子線を歩きながら、今日の散歩をどうしようかと考える。
今日の散歩はご破算にしようか。それとも長町南支店付近まで歩いて次回の散歩の初っ端で視点訪問するか… 国道48号線愛子バイパスの手前にある交差点を左折し、青葉区役所宮城総合支所や七十七銀行宮城町支店、愛子郵便局などが建ち並ぶ旧宮城町の行政上の中核をなす一画に入っても、まだ結論が出ない。沿道の景色も、なかなか頭の中に入っていかない。もっとも、市街地は前回の散歩で歩いた旧国道48号線(国道457号線)沿いに展開しているようで、私の歩いている道は行政施設群を通り抜けると愛子バイパスまで悠々見渡せる一面の田んぼであるから、特に目を凝らす必要もなかったのであるが。
その田園地帯も、斉勝(さいかち)川に架かる本木橋という小さい橋を渡ると、栗生という、1990年代から2000年代にかけて開発された住宅街へと変わる。南端が愛子バイパスに接しているロケーションからかみやぎ生協、TSUTAYA,西松屋カワチ薬品など、ロードサイドショップが数多く進出しているのが特徴だ。
その点ではごく普通の街並みと言えなくもないのだが、ただ一つ、黄色い標識を有するバス停が点在しているのが、個性と言えなくもない。仙台近辺のバス停の標識の色は、仙台市交通局は赤、宮城交通は白だから、黄色というのはいささか奇異に映る。
タネを明かすと、このバス停は、仙台駅前と栗生、愛子駅前、そして愛子駅から県道秋保温泉愛子線を南下した先の丘陵の中腹にある住宅地・錦ヶ丘とを結んでいる愛子観光バスのバス停である。この会社は元々貸切バスや観光バスをメイン事業としていたのだが、2003年に路線バス事業にも進出し、現在この1系統だけを運行している。旧宮城町と仙台市中心部とをトンネルで直結している仙台西道路を経由するので、所要時間は仙台駅前~愛子駅前が30分程度と仙山線の電車と遜色ない。同区間の片道運賃は、450円。零細企業ゆえ320円のJRより割高なのは致し方ないが、今日みたいに電車のダイヤが乱れている日には、地域住民の足として貴重な存在になり得ると思う。現に、バス停前で待っている人が何人か見られた。
そんな様子を目にしていたら、今日の散歩の落とし所についても、さしあたっての素案が出来上がった。
とりあえず、仙台駅まで歩くことにする。よくよく考えてみたら、昨年11月8日に仙台銀行支店巡礼を始めて以来、仙台駅を終点とした散歩は一度もなかったのである。仙台の繁華街もまたそれなりのご無沙汰になっているので、ここらで表敬訪問といきたいと思う。
そうと決まったら足取りも軽やかになる。栗生の住宅街を通り抜けて旧国道48号線へと出、新落合橋という歩行者、自転車専用の橋で広瀬川の北岸へと渡る。渡った先は主要地方道定義仙台線だが、センターラインのない隘路で、右手は広瀬川、左手には丘陵という景色が延々と続く。丘陵の中腹には仙山線の線路が通っており、時折電車の通過する音が響く。
1キロほど歩き、東北自動車道の高架橋をアンダークロスすると、生瀬(おいせ)橋で広瀬川を渡河した国道48号線に合流する。1983年に仙台西道路が開通して以来実質的には旧国道のような存在でありクルマの通行量も多くはないのだが、広瀬川の対岸にある東北自動車道仙台宮城インターチェンジ付近から東側は、従前からの国道も今なお現役の国道48号線である。
この辺りから仙山線の線路は北側に離れ始めるが、1キロに満たない場所に葛岡駅があり、そのすぐ近くには仙台市営の葛岡霊園や火葬場がある。そのせいか、沿道には墓石店や葬祭場の進出が目立っている。特定の施設の存在が思わぬ商業集積を生む例は福島市庭坂福島県運転免許センター周辺の旅館街など全国各地で見られるが、死者を扱った業者がこれだけ集積しているというのも妙な気分である。右手を流れる広瀬川が、三途の川に見えてくる。
しばらく歩くと、これらの業者の姿がそっくり消え失せ、広瀬川に沿う谷底に入ってしまう。人家も殆ど見られず歩道は設けられているものの2車線の狭い国道をそのまま歩き続けるとひょっとして黄泉の国へとたどり着いてしまうのではないかとの錯覚を覚えるのだが、住居表示的には青葉区八幡七丁目となっているから驚いてしまう。八幡とは大崎八幡宮とその門前町である八幡町を中心に区画されている町名。国道に沿って一丁目から七丁目まで東西に2キロほど細長く延びている。今日の散歩では、そのすべての丁目を通過する予定だ。
それにしても淋しすぎた七丁目を過ぎて六丁目に入り、卯年生まれの守り本尊という鷲巣山文殊堂の門前に差し掛かる辺りから、ようやく住宅が増えてくる。とは言うものの、広瀬川の谷はまだ続いているから、家々が斜面にへばりつくように建っている。広瀬川はクネクネと曲がりくねりながら流れており、国道もまた急カーブが連続していてクルマでは走りにくそうな雰囲気である。仙台西道路が開通する以前はこの道路が仙台宮城インターチェンジ仙台市中心部とのアクセス道路としての役割を担っていたのだが、ちょっと信じがたい。
その広瀬川の流れが多少穏やかになりグラウンドが整備された河川敷なども登場するようになると、五丁目に入る。ここから先は仙台城下町の範囲内であり、大崎八幡宮門前町・八幡町である。これに呼応するかのように、国道は広瀬川に架かる牛越橋へと至る滝前丁との交差点に差し掛かる辺りから、4車線の幅広い道路へと変貌を遂げる。もっとも、交差点のすぐ近くから参道が延びている大崎八幡宮の前から仙台駅前方面へは1976年まで市電が通っていたから、もしこの界隈に市電が通っていなかったならば今なお拡幅が行われていなかったかもしれない。