2011年1月8日 ~仙台銀行支店巡礼⑩ 結局、長町南支店までは行けず(後半)~

さて、その八幡町であるが、1月14日にどんと祭が開催されるとあって、国道沿いの商店街には提灯が掲げられ、お祭りムードを演出している。大崎八幡宮の参道もまた祭の準備が進められているように見受けられたので国宝に指定されている社殿まで往復しようかと思いかけるが、時計を確認すると参道入口の時点で10時09分であり、愛子駅を出発してから1時間半が経過しているのが気にかかる。参道入口から社殿までは長々と階段が続き往復10分以上は要しそうだし、今日の帰りは仙台駅発11時04分の福島行快速電車に乗ろうかと考えていたので、多少逡巡した結果、断腸の思いで諦めることにした。
でも、わざわざ境内に立ち寄らなくても、八幡町の商店街を歩けば、初詣に訪れた気分になってくる。戦前から終戦直後にかけて建てられたとおぼしき古い商店が散見されるし、歩道は電柱が地下化されたスッキリとしたもの。しかもダイスギが街路樹として植えられている。仙台の街路樹といえばまずケヤキが思い浮かぶが、こういう個性的な木を植える街路もあると思うとちょっと嬉しい。
そして、そんな商店街を、レトロバスのるーぷる仙台が通り過ぎて行く。このバスは八幡町界隈だと東行の一方通行だから、私を追い抜く形になる。だからついつい、歩きながら行く先を目で追ってしまうのだが、前方の国道が左に不自然に折れ曲がっているのが見えて、ちょっと気になる。
八幡町の商店街を通り抜けた国道48号線は土橋通との交差点を経て北四番丁へと通じているのだが、古地図で確認すると、これは1940年に師団が開業したのを機に北四番丁と八幡町とが半ば強引に結びついたものであり、本来八幡町は北四番丁の一本南側を通っている北三番丁へと一直線へと通じていたことがわかる。土橋通との交差点の直前に、八幡町から北三番丁へと至る古道と言うべき細道が今も通じているので、私もそちらに入ってみる…と書くといかにも歴史通っぽい感じだが、実は国道48号線と土橋通との交差点との近くに八幡町支店(227)があるため、これの前を通らないための苦肉の策である。
土橋通との交差点で八幡の町域からようやく脱出し、古びた家並と新しいマンションとが混在している北三番丁をしばらく歩くと、西公園通との交差点。この通りもまたかつての市電の経路であり、道幅が広い。交差点のすぐ近くには仙台市営バスの車庫があるのだが、ここはかつて市電の車庫であった。
北三番丁と打って変わってマンションが建ち並ぶ西公園通を南下。その通り名の由来となった西公園の北端に建つ仙台市民会館前の交差点で、定禅寺通が左手に分岐している。11月8日に本店(201)から黒松支店(202)へ向かう途中にもちょっとだけ歩いたが、見事なケヤキ並木と遊歩道や彫刻が整備された中央分離帯に魅かれ、二度目の来訪。
徐々に仙台の都心へと近づいていることもあり、定禅寺通の沿道は、オフィスビルが多い。先ほど前を通過した仙台市民会館もそうだが、仙台メディアテーク東京エレクトロンホール宮城など、文化施設が多いのも特徴だ。ともすればハイソな雰囲気が漂いがちな雰囲気であるが、それを打ち消すかのように、甘栗屋が強烈な匂いを発しつつ営業していたのが印象的だった。
また、それとは別に、中央分離帯の遊歩道には、若干の疑問が残った。国分町(奥州街道)との交差点を除き定禅寺通の交差点がスクランブル(歩車分離)化されていないため、中央分離帯を通して歩こうとすれば横断歩道を3回渡らなければならなくなるのだ。定禅寺通と西公園とを「緑の回廊」として一体化すれば回遊性が増して面白いと思うのだが、仙台市で検討してもらえないだろうか。
そのスクランブル化が唯一なされている国分町との交差点を右折。東北地方随一の歓楽街・国分町のメインストリートは、一昨年末にゲート設置や歩道整備が施され、面目を一新している。かつては悪評を呈していたピンクチラシも根絶したため、歓楽街にしては嫌に清潔な雰囲気と化してしまった。もう少し猥雑でもいいような気がしなくもない。
広瀬通との交差点を渡った先も町名は国分町であるが、ナイトスポットは殆どなく、銀行や生保会社の店舗が増えてくる。特に国分町と大町とが交わる仙台城下町の道路原標的存在だった芭蕉の辻周辺に、日本銀行仙台支店をはじめ金融機関が集中している印象だ。仙台銀行もまた2006年まで国分町広瀬通との交差点に面して国分町支店(203)を構えていたが、店舗移転後は建物が取り壊され、立体駐車場になってしまっている。
芭蕉の辻も直進し、青葉通との交差点に差し掛かる。この先を直進すれば南町、柳町、北目町と奥州街道沿いの旧商人町を堪能することができるのだが、時計の針が10時45分を指している。快速の発車時刻まであと19分しかないので、いいかげんに仙台駅に向かわざるを得ない。とりあえずここで左折する。
なお、柳町に関しては、次回の散歩の初っ端で歩くことにしたいと思う。通帳を忘れるという大ポカのせいで次回及び次々回の散歩行程は全面的な練り直しとなってしまったが、ルートを選定する楽しみがまた増えたと、できる限り肯定的、前向きに捉えることにしよう。
左折後は青葉通りを素直に直進すれば仙台駅に着くのだが、折悪く、本店のビルが目に入ってしまう。一度通った店舗の前を通るのは気が引けたので、サンモール一番町との交差点を右折してしまう。
ところが、よくよく考えてみると、本店を訪れる際に仙台駅から南町通を経てサンモール一番町を歩いていたのであって、これらの通りを再び歩くのもどんなものかと考える。そこで、左手に枝分かれしている文化横町に入ってやり過ごし、一旦南町通に出て東二番丁を渡った先で今度は仙台銀座を経て仙台朝市を通るというルートで、仙台駅へと向かうことにした。文化横町や仙台銀座は横町の飲み屋街、仙台朝市は上野のアメ横のミニ版とも言える生鮮食品の常設市場で、いずれも昭和の雰囲気を色濃く残した街並みである。
二つの飲み屋街の方は日中ということもあり人通りも殆どなく、特に仙台銀座の方は店舗が歯抜け状態になっていて今後の存続に不安を抱いたが、仙台朝市に関しては、11時近くというのに多くの買い物客で賑わっていて、活気の良さを十二分に感じた。混雑する客や商品運搬用の台車をかき分けながら歩くので思うように進めず快速に間に合うかどうか微妙なタイミングになってきたのだが、それ以上に、ロードサイドショップ全盛の現在において朝市がこれだけの集客力を誇っていることが嬉しく感じる。
そんな朝市から私も活力を得たのか、ラストは猛然とダッシュ。イービーンズの前でペデストリアンデッキを駆け上がり、何とか10時57分に、仙台駅に着くことができた。
快速は既にホームで待っていたので、さっそく車内に入り、席に着く。ダッシュの余韻、そして車内の暖房が徐々に効いてきたのか、仙台駅を発車する頃にはすっかり汗だくになっていた。周囲にいた乗客は私を見てどのように思っただろうか。そのことを想像すると恥ずかしい。恥ずかしさ余って更に脂汗が流れるから、なおのこと始末が悪い。