2011年2月4日 ~仙台銀行支店巡礼⑯ 太白出張所・西中田支店(後半)~

国道286号線に出る。
ちょうど仙台南インターチェンジの出口にあたる一帯であり、東北自動車道仙台南部道路が層をなして通っている。そう言えば、太白団地や人来田のすぐ西側には東北自動車道が通っていたんだっけ。団地側からだと全く確認できないので、存在をすっかり忘れていた。
仙台南部道路の高架橋と並行しながら、国道を東進。ほどなく名取川を渡る。渡った先は、仙台市ではなく名取市の区域内となる。仙台銀行支店巡礼で名取市内にある名取支店(307)、名取ヶ丘出張所(308)の2店舗を訪れるのは恐らく4月の話になると思うのだが、西中田支店のある太白区中田(旧名取郡中田村)が名取川の南岸にあるため、一旦名取市域を通らざるを得ない。
仙台市域のうち中田だけが名取川の南岸にあるというのは、ちょっと不思議である。厳密に言うと太白区西部の生出(おいで・旧名取郡生出村)や秋保(旧名取郡秋保町)も名取川の南岸に区域を展開させているがいずれも中心集落は名取川の北岸にある。一方中田は、その全域が名取川の南岸に所在しているのだ。
中田が仙台市編入されたのは、今からちょうど70年前の1941年のこと。同時に同じ名取郡から六郷村(現・若林区)が、宮城郡から七郷(現・若林区)、高砂、岩切(いずれも現・宮城野区)の3村が仙台市編入されているため、仙台市の面積は87.86平方キロから188.21平方キロへと一気に倍以上へと膨らんだ。
恐らくこの背景、目的には戦時体制の激化に伴う都市力強化があったと推察するのだが、その割には、中田をじはじめ旧5村における都市的開発は、かなり遅れていたように思う。1988年に市域に編入された泉区にも先を越される形となり、その間、特段のマスタープランもないままに無秩序な市街化が進んだ経緯がある。中田に関して言えば、地域の中核をなす南仙台駅の東側一帯は隘路だらけのかなりゴチャゴチャとした住宅地が広がっているし、駅の西側、西中田支店も所在する西中田や柳生(やなぎう)といった一帯はきちんと区画整理されてはいるものの、周辺地域へのアクセスには未だに難がある。これについては後ほど述べたいと思う。
散歩に話を戻す。国道286は名取市域を2キロ近く進んでから再び名取川を渡って仙台市内に戻るのだが、名取川の南岸にこだわりたい私は、橋を渡る手前の交差点で右折することにした。曲がった先の道路は熊野堂柳生線という名の市道であるが、国道286号線南仙台駅方面、あるいは名取市を縦貫して仙台空港方面へのアクセスを担う道路であり、4車線に整備されている。しかも、この道路の南西に展開する丘陵にはゆりが丘、みどり台那智が丘といった住宅地が1980年代後半以降に相次いで開発され1989年には仙台市中心部にあった尚絅女学院短大(2003年に尚絅学院大学に改組)も移転するなど、沿道自体の今後の発展も期待できるようだ。
が、私の関心は、それとは別のところにあった。感の良い読者の方ならわかるかと思うが、先ほどから「熊野堂」「那智が丘」といった地名が登場するように、この界隈は熊野信仰が盛んであった地域でもある。驚いたことに、熊野本宮社、熊野神社(新宮に相当)、熊野那智神社と半径3キロほどの狭い範囲内に三つの神社が揃っており、しかもこれらの神社は本家の熊野三山と地形的、位置的な配置が酷似しているのだ。残念ながら沿道から社殿を確認できるのは熊野神社にとどまる。名取市の「ミニ熊野」は、もう少し積極的にPRされても良さそうに思う。
熊野神社の門前で右折し、2車線の道路を南仙台駅方面へと向かう。田んぼの中をしばらく歩くと仙台市へと再突入。市境を示す標識はないが、仙台市に入ったとたんに道路の幅が4車線へと広がり、沿道の景色も区画整理された住宅地へと変貌する。ロードサイドショップも結構進出している。ここでもまた中核となる店舗はみやぎ生協だが、沿道から南に少し離れた場所にはヨークベニマルも進出している。
そんな一角を1キロちょっと歩くと、県道仙台館腰線との交差点。こちらも4車線道路であり、名取川に架かる太白大橋が1994年に開通して以降、中田や名取市の西部と仙台市中心部とを直結する大動脈として機能している。中田と仙台市中心部とのアクセス面でのボトルネック名取川であり、太白大橋の開通以前はこの川を渡る橋が東北本線の東側にしか存在せず、しかも東北本線を渡る手段は狭隘な踏切がいくつかあるに過ぎなかった(これについては、現在も殆ど改善されていない)。従って中田西部の住民は相当な不便を強いられていた訳で、太白大橋の開通はまさに念願であったと言える。
西中田支店は、この交差点に面して建っていた。立地条件の良さが幸いしてか、店内にもATMコーナーにも客がおり、入金までに数分待つことになる。仙台銀行の店舗でこういうシーンを見るのは珍しいので、時間のロスは気にならない。むしろ嬉しく思う。なお、西中田支店は、南仙台駅の東側、仙台バイパス沿いにあった德陽シティ銀行中田支店の営業を仙台銀行が引き継いだものであり、営業譲渡とほぼ同時期に西中田へと移転した経緯を有している。店内の盛況ぶり(?)を目の当たりにすると、移転は正解だったと思う。
入金を済ませ、南仙台駅へと向かう。今日はこの駅で散歩を区切り、次回の散歩で鶴が丘出張所まで一気に北上したいと考えている。
途中で、東北新幹線の高架橋をアンダークロスする。仙台市内の東北新幹線は大半の区間東北本線にベッタリ寄り添っているから、新幹線だけが単独で通っている風景はある意味珍しい。もっとも、その先200メートルほど歩くと、南仙台駅の西口広場が待ち構えているのだが。
先ほど通った那智が丘などの名取市西部の住宅地群や尚絅学院大学への路線バスが発着しているバスプールを備えたずいぶんと立派な広場であるが、駅舎・改札口が線路の東側にしか設置されていないため、駅の利用者は広場から延びている東西連絡通路を渡る必要がある。これまで見てきたように駅の西側は宅地開発が進んでいるし、バスへの乗り継ぎ客の便を考えると、一刻も早い橋上駅舎への改築が望まれるところだろう。