2011年3月5日 ~とりあえず、自宅まで④ 長町から槻木まで~

前回の散歩では、仙台城下町に別れを告げた。
そして今回の散歩では、仙台市そのものに別れを告げることになる。
しかも行先は、柴田町にある槻木駅仙台市を出た後、名取市岩沼市柴田町と一気に南下する。市外局番も、022の仙台市名取市から0223の岩沼市を経て0224の柴田町だから、目まぐるしく変わる。加えて槻木は伊達市福島市方面へと延びている阿武隈急行の分岐点であり阿武隈川の沿岸にあるから、実距離以上に福島県の匂いが漂う地域だ。
ウジウジと別れを惜しむより、一気に振り切った方がいい。そして新しいステージへと進めばいい。そう思う。
いつものように、桑折駅発6時29分の下り始発電車に乗車し、長町駅着7時33分。仙台駅以南の駅を起点とする散歩は、考えてみたら2月9日に南仙台駅から鶴が丘出張所(234)まで北上した時以来のことであった。
まずは、高架の長町駅を東西方向にアンダークロスしている都市計画道路長町八木山線を西進。5分ほど歩くとザ・モール仙台長町、ララガーデン長町、太白区役所と、長町南駅周辺の太白区を代表する建物群が見えてくるが、その手前を南北方向に通っている県道仙台館腰線との交差点を左折し、南下する。右手を眺めると、長町南支店(221)の看板が、ちょっとだけ見えた。
長町南土地区画整理事業が進行中の富沢駅周辺を通り抜け、名取川に架かる太白大橋を渡る。後を振り返ると、頂上にテレビ塔が並び立つ大年寺山や八木山の丘陵に展開する住宅地群がくっきりと見えている。住宅地群は東西方向に長く続き、太白山の麓まで達している。あの辺りに太白出張所(232)があったなと思いだす。
一方、川の前方には、西中田、柳生の住宅地が見えている。沿道はロードサイドショップ街だが、高層住宅やマンションも意外に目立つ。あの一帯のほぼ真ん中に西中田支店(233)があったことも思い出す。ここのATMで並んだっけ。このロケーションならば店舗が繁盛するのも納得である。
その西中田支店が所在する主要地方道仙台岩沼線との交差点を通過し、その二つ先の交差点を右折。閑静な住宅街を1キロ近く歩くが、ある地点で突然尽き、田畑が広がる風景へと変わる。しかもその境目は仙台市名取市との境界でもある。エピローグにしては少々あっけない感がなくもないが、仙台城下町の方向に向かって一礼し、名取市へと歩を進める。なお、いつの間にやら、仙台岩沼線に合流していたようだ。今日はこの道路を、終点の岩沼市南長谷、国道4号線との合流点まで歩き通す予定だ。市境から1キロほど進んだ先にある高舘小学校の近くにある道路j標識で確認すると、合流点までは13.5キロ。槻木駅まではここから更に3キロほど歩くことになるから、先は長い。この時点で長町駅を出てから1時間が経過していたから少々うんざりするが、千里の道も一歩からの心境で、前方を凝視する。
実は、仙台岩沼線は、私にとってはクルマでの通行経験もない未知の道路であった。沿道の状況については名取市岩沼市の海岸平野とその西側の丘陵との境目を通る至って平坦、平凡なものだと認識していたのだが、いざ歩いてみると、それは大きな誤りであることに嫌でも気付かされる。高舘の集落を出外れると丘陵を二つも乗り越えなければならない。一つ目の丘陵の鞍部には宮城県農業センターが、丘陵と丘陵の谷間には「小倉百人一首」にも和歌が選ばれている藤原実方朝臣のものと伝えられる墓所が、それぞれ所在する。
その谷間の右手を見ると、丘陵上に谷を大きく跨ぐ橋や照明塔が確認できる。これらは東北電力名取スポーツパークに関連する設備。野球場やサッカー場が整備され、宮城県内のアマチュアスポーツのメッカのひとつとなっている同施設であるが、どうしてこんな山の中に建設されたのだろうと首をひねってしまう次第。
一方左手には、東北新幹線の高架橋が見えている。ところが、二つ目の丘陵を越えてみると、高架橋は右手に展開していた。二つ目の丘陵と同時に新幹線も越えていたのか…妙な感慨を覚える。ちなみに今日は東北新幹線はやぶさ」の運行初日であったが、それらしい列車の姿を拝むことは残念ながらできなかった。
二つ目の丘陵を越えた先は、笠島の集落。名取市愛島(めでしま)地区の中心集落でもあり、小学校や郵便局など、愛島地区の中核施設が揃っている。そう言えば、仙台銀行支店巡礼をスタートする直前、昨年11月2日に名取市南西端の住宅地・愛島台を歩いたが、愛島台の子供達は笠島までスクールバスで通学している訳で…仙台への散歩のプロローグとエピローグとが、ここで奇妙にシンクロしていく。集落の南端では、その愛島台へと通じる道路との交差点を渡る。交差点近くにある「森の芽ぶき たまご舎(や)」の看板に、見覚えがあった。
このたまご舎を含め、笠島集落の南側では、食事処というか土産処というか、そんな店が点在している。どういう訳か、伊達のからあげ屋まで出店している。こんな所と言っては失礼だが、右手に丘陵、左手に田んぼというロケーションを見ると、採算に見合う出店なのだろうかと少々心配になるほどだ。
やはり11月2日に訪れた岩沼市志賀を源流地とする志賀沢川を渡ると、岩沼市に入る。その志賀を通っている主要地方道岩沼蔵王線との交差点を通過すると、三度目の丘陵。ただし、名取市内に比べると、アップダウンはきつくない。
丘陵上は、ハナトピア岩沼のようなレジャー施設もあるが、基本的には住宅地。この界隈は岩沼駅のちょうど真西にあたるし、岩沼市には宅地開発に適した丘陵が少ないから、宅地開発が進められたのであろうか。築20年は経たとおぼしき住宅が、沿道に建ち並んでいた。
丘陵を下ると、左手には一面の田んぼの向こうに岩沼の街並みが展開するようになる。街の南端に位置する東洋ゴム日本製紙の工場が、やけに大きく見える。毎日通勤で利用する東北本線の車窓から岩沼を眺めているけれど、これらの工場が街に占める割合がこんなに大きいとは思ってもみなかった。遠方から俯瞰して初めてわかることなのかもしれない。
その東北本線が、街並みから飛び出して、こちらへと近づいてくる。その向こうには、クルマがひっきりなしに行き交う国道4号線もチラチラと見えている。長々と歩いてきた仙台岩沼線も、ようやく終点。東北本線を陸橋でオーバークロスし、坂を下るとすぐに国道と合流する交差点に差し掛かる。ここを右折し、1キロほど歩くと、いよいよ柴田町だ。
国道の周辺は田んぼばかりで特段目立つ風景はないのだが、柴田町に入った辺りから、左手から阿武隈川の堤防が近づいてくる。国道から川そのものを眺めることはできないものの、福島県との繋がりをかすかに感じた次第。
ほどなく槻木の町に入り、11時07分、槻木駅に到着。次回は久々の仙台銀行支店巡礼。 仙南ブロックの基幹店舗である白石支店(301)を訪れる予定だ。