2012年8月3日 ~青春18きっぷで小旅行 その5~
考えてみたら、福島県と周辺各県との境界は輸送量が低下し、列車の運行本数が減るのが常。東北本線だと栃木県境の豊原、白坂や宮城県境の貝田、越河と無人駅が連続しているのだが、常磐線沿線は市街地がほぼ切れ目なく続いており、せいぜい隣町に入ったような感覚である。いわき市民の中には福島県よりも茨城県の方に帰属意識を感じる方もいるそうだが、それもまた納得である。いわき市南部の中心駅の一つである湯本駅では野口雨情の作詞した「シャボン玉」が発車メロディーとして使われている。雨情が湯本に長期間滞在していたことに因む起用だそうだが、こういったエピソードもまた、いわき市と茨城県との関わりの深さを想起させてくれる。
駅舎のリニューアルと同時にオープンしたのが、下の写真に写っている再開発ビル・ラトブである。
が、高校生とお年寄りが客層の大多数を占めているのが、少々気になった。高校生が多いのはラトブの4階に図書館が入居している影響かと思われるが、お年寄りが多いのはどういうことだろうか。改めて駅前広場に戻ると、ベンチをお年寄りが独占していたりする。高校生がいなければ完全にシルバータウンじゃないか。
この背景には、二つの理由が挙げられるだろう。まず一つは、福島第一原発事故に伴い原発周辺から多くの避難者がいわき市へと流入したことにより、高齢者人口が一時的に増加していること。もう一つは、そもそもいわき市には大学やホワイトカラーの勤めるオフィスといった青壮年層の受け皿に乏しいため、高齢化率も本年7月1日現在で25.8%に及んでいることである。ちなみに、同日現在の福島県内の主要都市における高齢化率は福島市が24.8%、郡山市が21.5%、白河市が23.3%、会津若松市が26.0%であるから、いわき市の高齢化率は高い部類に属していると言えよう。
それでも、街並みを見て回ると、それなりに面白い兆候は見られた。国道6号線沿いには双葉町から避難してきた接骨院の方が「がんばる接骨院」なる新店舗を立ち上げていたし、一時的な事象にせよ避難者や原発作業員といった人たちを巻き込めば、街自体もある程度は盛り上がりそうな兆候はある。いわき市のトップには、積極的な対策を期待したいものである。
何故か撮影してしまったラトブ裏にある飲み屋街。水戸の飲み屋街を撮影できなかった借りを、いわきで返した格好。