2012年2月19日 ~288(ニーパッパー)を三春まで~

前回の散歩で片鱗だけ触れた逢隈橋を、今回渡ろうかと思う。
歩く道路は国道288号線の一本道で、迷子になる心配はない。
せっかくだから、郡山駅から三春町まで歩き通そうと思う。一昨年の6月11日に訪れて以来の三春町。きれいに整備されている大町の街並みに、また触れてみたかった。
 
桑折駅5時41分発の上り始発電車に乗り、定刻6時53分に郡山駅着。日の出通り⇒大町⇒安積街道の順に進んで、国道4号線へと出る。大町は土地区画整理の計画があるものの、今なお古めかしい飲み屋が数多く軒を連ねている。震災被害も思ったほど多くはないようだ。
国道を北上し、逢瀬川を渡って富久山町へ。更に1キロほど進んでヨークベニマルの脇を通り過ぎると、国道288号線との分岐点となる。先にも述べたように、今日の散歩は、ここからずっと、この国道と付き合うことになる。通称「ニーパッパー」。楽しげな語感である。
が、国道沿道はというと、どことなくパッとしない。日東紡などの工場が展開しているが所々に田畑が見られ工業地域というほどのものではないし、住宅もまた区画整理されないままに「建てたい所に建っている」印象だ。目ぼしい商業施設も見当たらない。一言で表現すれば絵に描いたような街外れの風情であり、もう少しどうにかならないものかと思ってしまう。沿道に何か中核になるような施設があると、街並みにも変化が見られるのではなかろうか。すぐ南側に磐越東線が通っているから、駅でもあれば多少は賑やかになるのかなと推察を巡らせる。
その磐越東線の線路がグッと近づいてくると、逢隈橋が近づいた証拠。正面を見据え、一気に渡り切る。その先には、前回の散歩で通過した小泉の集落が見えている。
不思議なことに、この小泉の集落から先で、国道を行き交うクルマがパッタリと途絶えてしまう。日曜日のせいもあろうが、郡山市と三春町や田村市を結ぶ大動脈にしてはいささか淋しい有様だ。その交通量に呼応するかのように歩道が途絶える区間すらあり、路肩や霜柱立つ路傍の盛り土を歩いてやり過ごす。
歩道が復活したのは、三春町に入った標識が目に飛び込んだ後だった。ただし、この辺りの国道は郡山市と三春町の双方の境界が錯綜している箇所をほぼ一直線に貫いており、標識は通過したものの今歩いている所が三春町なのか郡山市なのか判然としない。この辺りはいわゆる昭和の大合併以前は巌江村という一つの自治体の中にあったのだが、合併先を巡って一悶着あったらしく、郡山市(一部は西田村を経て郡山市編入)と三春町に分割統治されることになってしまった。その結果、三春町側には中学校が存在するのに郡山市側には中学校が存在せず、なんと近くにある磐越東線舞木駅から郡山市中心部にある郡山第二中学校まで電車通学を余儀なくされているという。バカげた話だ。一刻も早く、そんな不自然な状態は解消されるべきだと思う。
不自然と言えば、この辺りの市外局番もややこしい。基本的に郡山市は「024(9)」、三春町は「0247」なのだが、この辺りは三春町域でも「024(9)」だったりする。どうせだったら郡山市周辺のMA(料金単位)を統一して、全部「024」にしたらいいのではと思う。三春町、あるいは市外局番「0248」の須賀川市や「0243」の本宮市などは郡山市と繋がりが深く、通話する機会も少なくないはず。また、MAを統一すれば将来的な市町村合併にも弾みがつくかもしれない。
そんな感じでマニアックな地理ネタばかりに関心が行ってしまうのであるが、改めて沿道風景を見ると、通行量が少ない割にはドライブインや食堂が比較的目立つ。今現在営業しているのかどうかはわからないが、なんと(お二人様専用ではない)宿泊施設すらあった。どうしてまたそんなにあるんだろうと首をひねってしまうが、とある施設の看板に「工事関係者歓迎」といったコメントが書かれていたのを見て、なるほどそれが需要かと合点した。1980年代から90年代にかけての三春町近辺は磐越自動車道や三春ダムといった土木関連のビッグプロジェクトが目白押しだったし、現在でも磐越自動車道山東インターチェンジの東西で国道288号線のバイパス工事が進行中。桜川の谷底を行く現国道の頭上高くには、郡山東部広域農道や磐越自動車道といったその成果物が大きくオーバークロスしている。
ちなみに、磐越自動車道がオーバークロスしている地点では、行政区画が再び郡山市へと戻る。ダイユーエイトやリオンドールといったロードサイドショップが谷底の狭い空間に展開している。地元では三春町名産との認識があるゆべしの製造元であるかんのやの本社工場も、この界隈にある。
話をダイユーエイトとリオンドールに戻すと、前者は福島市、後者は会津若松市といずれも福島県内に本社を有する地元企業であるにもかかわらず、郡山市には殆ど進出していない。ダイユーエイトは南隣の須賀川市には3店舗も出しているにもかかわらず郡山市内にはこことビッグパレットふくしま近辺の2ヶ所にしかないし、リオンドールに至っては郡山市内の店舗はここだけだ。郡山市を避けているのはどういう事情によるのだろう。問題があるのは企業の側なのか、はたまた郡山市の側なのか、私にはわからない。
更にしばらく進むと沿道には徐々に住宅が増えていき、三春町の市街地へと入っていく。まず登場するのは城下町南端に位置する八幡町や中町といった一帯で、古びた商店が軒を連ねているのが特徴だ。中核店舗としてはヨークベニマルがあるのだが、つい先日、2月17日に少し移転した上でリニューアルオープンを果たしている。時計を見るとまだ9時を回ったばかりだが既に多数の買い物客で駐車場は満杯であり、交通誘導の警備員が忙しそうにクルマをさばいていた。
この一角を通り過ぎると、いよいよ大町の商店街。ただし、今回の散歩では市街地の北端に位置する磐越東線三春駅を終点に考えていたので大町には少しだけしか立ち寄れず、名残惜しい気持ちで後にせざるを得ない。行く先には荒町の商店街が展開している。ここもまた歩道がきれいにリニューアルされていたものの、沿道には商店に混じって一般住宅が建っているせいか、ファザードの整備はあまりされていなかった。少し残念である。
更に10分ほど歩くと、三春駅に到着。街外れに位置しているので駅周辺には商店街こそ整備されていなかったものの、駅舎は武家屋敷風で城下町の玄関口の雰囲気は十分すぎるほどに感じる。駅舎内には、ばんとうプラザという地場産品販売所と軽食堂を兼ねたスペースがある。「ばんとう」ってどういう意味だろう… 「番頭」や「晩冬」といった単語が頭に浮かんでは消え、磐越東線の略称である「磐東」の意味だと気づくまでに、多少の時間を要した。