2012年3月14日 ~大玉村を歩く~

前回の散歩で、郡山市内に架かる阿武隈川の橋はすべて制覇した。
この結果、須賀川市の江持橋から下流に架かる徒歩渡橋可能な阿武隈川の橋は、すべて早朝散歩で歩いたことになる。
一日たりともこの記録を途絶えさせたくはないのだが、丸森町で工事が進んでいる国道113号線バイパスの丸森大橋が今年6月に開通予定とのこと。従って、6月には丸森町近辺でスタンバっておきたいと考えている。
このスケジュールから逆算すると、郡山市近辺からは一旦退却し、ホームグラウンド(?)である中通り北部へと引き返した方が良さそうだ。ただし、6月までは結構間があるので、これまで歩いたことがなかった地域を重点的に経由しながら、ゆっくり北上しようかと考えている。
 
今回歩いてみようかと思ったのは、大玉村。村域の東端を縦貫している奥州街道国道4号線ならば何度も歩いたことがあるのだが、村役場のある玉井には足を運んだことがなかったので、この機会に訪れてみたい。なお、散歩の終点は、二本松駅にしようかと考えている。
桑折駅5時41分発の上り始発電車に乗車し、前回の散歩の終点であった五百川駅に6時42分着。桑折駅と五百川駅との間は49.0キロしかないが、私が乗った電車は福島駅で「北斗星」に抜かれるため11分も停車するため、約1時間もかかってしまう。
駅員のいない五百川駅の駅舎を出、西へと進む。歩く道路は県道大橋五百川停車場線。大橋は玉井の北西にある集落であり、この道路をひたすら歩けば玉井へと行き着く。
序盤戦は、アサヒビールの大工場を左に見ながら、国道4号線との交差点を渡り、東北自動車道をアンダークロス。本宮ICがすぐ近くにあり、エイトタウン本宮などの商業施設や佐川急便などの物流業者の営業拠点が点在する一角でもある。
東北自動車道の西側を平行している主要地方道本宮熱海線との交差点を渡ると、いよいよ本格的に大玉村へのプロローグに入る。周囲は田んぼが広がり、遠くに目をやると、右手には東北自動車道、左手には丘陵が展開する光景が続く。周囲が田んぼと言っても軽いアップダウンが間断なく訪れ、郡山市近郊らしさを見せつけてくれる。そんなアップダウンをものともせずに郡山方面へと通勤するとおぼしきクルマが通り過ぎ、通学中の小学生が「おはようございます」と元気に挨拶してくれる。典型的な田舎道だが、朝はそれなりに忙しい。
本宮市中心部から見て南西に位置する青田地区の農業構造改善センターを通り過ぎると、東北自動車道の築堤がグッと近づき、しばらく並走する形になる。そちらも忙しそうに多数のクルマが行き交っているが、私の歩いている県道はというと通勤のピークが過ぎてしまったらしく、閑散とした雰囲気。
本宮市の観光案内で名前をよく聞く蛇の鼻遊楽園は、この一角、沿道左手に所在する。本宮市豪農・伊藤家の別荘であった蛇の鼻御殿を中心に整備された庭園だそうだが、今まで一度も訪れたことがないし、今日も入口のゲートだけ一瞥して通過する。なお、御殿の持ち主であった伊藤家は、1960年代に代議士を一期務めた伊藤幟(のぼり)や、歌手の伊藤久男などを輩出したことでも知られている。
一方、右手には、安達太良SAの施設が展開している。SA内のレストランへは県道からも入ることができ、「牛タンわっぱ定食」などの幟がはためいている。今朝からトースト一枚しか食べていないので一瞬食欲をそそられかけたが、グッと我慢して通過する。
SAの敷地を過ぎると、いよいよ大玉村に入る。五百川駅からここまで結構登っていたらしく、右手には広々とした田んぼが俯瞰できる。歩き甲斐がありそうな風景だ。
ワニダー國馬邸という変わった名前のレストランの前を通過し、坂を下って田んぼの中を北上。1キロほど歩くと、県道石筵本宮線とのT字路に突き当たる。玉井の集落は、この交差点を左折してすぐの所に展開している。
集落内に入ると、県道の道幅は歩道もセンターラインも消え失せるほど細くなり、しかもクランクが連続する。そんな道を、地元の人が運転しているとおぼしきクルマが、慣れた感じでスイスイ通り過ぎていく。集落の中心にデンと構えているJAの前には、本宮駅とを結ぶ広域生活バスが停まっていた。同駅との間を一日8往復発着しているというバスの車内をチラリと覗くと、10人前後の客が乗っていた。ローカルバスにしてはまずまずの入りだと思う。
そのJAから先は、県道から離れ、村道町宮ノ前線を二本松市方面へと北上する。村道とはいえ村役場や中学校など村の中核施設が建ち並び、センターラインや歩道も整備されるなど先ほど歩いた県道よりも立派な道だ。多少のアップダウンはあるものの、玉井から3キロほど北にある終点の宮ノ前集落まで歩いてみる。宮ノ前は田んぼが広がる平地と丘陵との境界にある小さな集落。酪農を営む農家がいくつかあり、道路のすぐ脇には大きな乳牛が何頭も収容されている牛舎が点在していた。
宮ノ前から少し東には、大玉村二本松市とを結ぶ農免道路が南北に縦貫している。そちらまで足を運ぶと、田んぼの真っただ中を見通しの良い道路が、一直線に延びていた。行き交うクルマもビュンビュンと気持ち良さそうに飛ばしている。私もクルマに触発される形で歩くスピードが早まったような感覚になる。
しばらく北上すると、杉田川を渡る。標識が立っていないが、どうやらここが、大玉村二本松市との境界らしい。渡河してから700メートルほど北上すると、県道馬場平杉田線との交差点。この県道は、5年前の梅雨時に、杉田駅から馬場平を経由して岳温泉まで歩いたことがある。そのことを思い出し岳温泉の方向に目をやるが、真っ白な雪を被った安達太良山が聳えるばかりで、さすがに今の時期に歩こうという気は起きない。
交差点の先にあるアップダウンを過ぎると、原セの集落に入る。集落といっても集村ではなく散村であり、丘陵の麓に農家が点在しているといった状況だ。これらの散村のほぼ中央に小学校があるが、その周囲には人家が一軒も見当たらなかった。田舎においても小学校の周囲には文房具や食料品を扱う雑貨屋が営業しているケースが少なくないのだが、それもない。
ちなみに、この小学校の名前は、原瀬小学校という。校名が漢字の「原瀬」なのに、地名は何故かカタカナ混じりの「原セ」。どうしてそのようになっているのか、よくわからない。
原セからは、東へと進路を変える。二本松市中心部へ向かうまでに、アップダウンが二度。坂を下りきると、国道459号線と合流する。前方には、久々に登場する東北自動車道の高架橋。下り車線が異様に混んでいる。一体どういう事情なのかと疑問に思いながら歩を進めると、二本松ICの先で人身事故が発生したため通行止とのこと。二本松ICの出口は国道沿いにある。案の定、出口周辺は大混雑となっていた。二本松IC以東でも道路工事が行われており、渋滞を縫うように歩く羽目になる。風景を堪能する暇もないままに中心市街地へと入り、10時09分、二本松駅に到着。
福島駅方面への下り電車は、10時31分発とのこと。だからそれまでホームのベンチに座ってまったりと待っていたのだが、その間に、学生服を着た中学生の一群がホームへとなだれ込んで来た。そう言えば、今日は県立高校Ⅱ期選抜の合格発表日。良い結果が待っていてくれればいいなと、祈らずにはいられない心境になる。